希望溢れる色
よろしくお願いします
しばらく歩いていると学園の門が見えてきた。門は高く天に突き刺さるかの如く、そびえたっていた。門の向こう側には上級生たちが今日、もしかしたら自分たちの仲間になるかもしれない、後輩魔導士見習いを迎えていた。
カラージャッジが終わるとこの学園に通う生徒たちはそれぞれの寮で生活することを強制される。魔導士になるためには知識だけでなく、それ相応の態度や心構えを学ばなければならない。なぜなら魔導士は将来、高貴な身分の者に仕えることも少なくなく、そこで無礼な態度や姿を見せれば本人はもちろん学園にも多大な被害が及ぶからだ。そのためそうしたことにならないようにカラージャッジ後は家を出ることになるのだ。
「今日から一人暮らしだね!アルマ生活できるの?」
口元を隠してそう言うが、小馬鹿にしているのが目から分かる。
「それを言うならイルナだって」
「あら、私はできるわよ。馬鹿にしないで」
イルナがわざとらしく顔をそむけた。
「ごめんごめん。まあでも、寮生活だから家を出ても食堂でご飯食べられるし、洗濯と掃除ぐらいじゃない?それも寮の部屋ごとに行うから、めんどくさくても強制的にやることになりそうだよね」
イルナは特に答えないが雰囲気で確かにそうだと醸し出していた。
「カラージャッジは既定の時間になり次第順に測っていく。それまでそれぞれの教室で待っていること」
学園に着くとこれまで自分たちの担任をしていたハリス先生が続々と学園に到着する生徒たちに声をかけていた。
「よう、やっと来たか。アルマ」
そう声をかけてきたのは兄のルイだった。
「ルイ兄!会いたかったよ」
イルナもルイ兄の姿を見て同じように声をだした。
「久しぶりだな。アルマ。俺も今日お前と会えることを楽しみにしていたよ。お前ならきっと純色に近い色が出せると思うよ」
尊敬するルイ兄にそんなことを言われて少し照れくさかった。
「イルナは赤色がお望みだったか?」
「うん、ルイ兄のような魔導士になりたいの。それにかっこいいしね」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、俺はまだ魔導士にはなれていない。単にお前たちより早く生まれてきただけの同じ魔導士見習いだよ」
「そんなことないよ。ルイ兄!ルイ兄は僕のあこがれだし、母さんも父さんもすごいって言ってたよ!」
「母さんと父さんがそんなこと言ってたんだな。ありがとなアルマ。教えてくれて。なんか今の話聞いて家に帰りたくなったよ」
ルイはそう言って家のある方に視線を動かした。
「まあ帰れないわけでもないし、また時間を見つけて顔を見せに行くとするよ」
「うん、それがいいと思うよ」
「よし、とりあえず二人とももう少しカラージャッジまでは時間があるから教室で待ってな」
「そうするよ!」
「よしじゃあまた後でな」
ルイ兄はカラージャッジ後もらえる各寮のシンボルが付いたローブをはためかせて姿を消した。その背中には不死鳥の模様が刻まれていた。
「いいな、やっぱりかっこいいよね」
イルナが去っていくルイ兄の背中を眺めてそんなことを言った。
「うん、かっこいいよね。早く僕も欲しいな」
「・・・うん!そうだね!私も欲しい!」
「とりあえず教室まで行こうか」
「うん、行こ!」
二人は並んでこれまで自分たちが学んできた教室に向かった。
教室に着くと既に何人かのクラスメイトが自分の席に座っていた。
「あっ、二人ともおはよう」
緑色の美しい髪をなびかせてサーラは近づいてきた。
「おはよう、サーラ。今日は早いね」
「そりゃあ、そうでしょ。今日という日を何日も前から楽しみにしてたんだもん」
「確かサーラは緑が希望だったっけ?」
「うん、私の髪色と同じ緑だったらいいなってずっと思ってるの。それに自然が私大好きだから色もそれになると嬉しいかな。別に他の色でもいいんだけど、やっぱり緑かな。そう言うイルナは赤でアルマは橙だったよね」
「うん。そうだよ。早く時間になってほしいね」
そうしていつもより早くついていた友人との会話を終え、僕たちはそれぞれの席に置きに行った。この教室に来るもの最後だと思うと少し物寂しさを覚える。僕たちがカラージャッジを行った後はすぐに別の生徒がこの教室を使うことになる。忘れ物がないようにしとかないと。
ありがとうございました。