第一条
一時の思いの高ぶり、ではなかったようだ。
あれから一ヶ月くらいずっと考えていた。友達以上のこの感情はどのくらい友達という想いとかけ離れているのか。輪郭がボヤッとしているがたぶんこの想いはただ好きというだけでなくて日和を一番に思うことや誰にも取られたくないというものがあって、だからきっと恋なのである、それが今の結論だ。
でも日和には好きな人がいて、私は女で、実りそうもない恋で。だから私は今『恋の終活to doリスト』なる物にしたい事を書いている。
『恋の終活to do リスト
第一条 映画館に行く
第二条 花火大会に行く
第三条 「月が綺麗だね」と言う
第四条 文化祭を一緒に回る
第五条 体育祭のリレーでかっこいい所を見せる
第六条 エスコートする
第七条 愛してるよゲームをする
第八条 夜通しLINE
第九条 バレンタインチョコを渡す
第十条 第二ボタンをもらう
第十一条どんな時も日和の幸せを心から願う』
この紙に書いてあること全て終えた時、日和に恋することをやめようと思う。
夏休みどっか行く?ハワイ行くのいーなー、私はおばあちゃん家だよ、とか教室は夏休みの予定の話で持ちきりだ。
「あっ春私さフリーダム見に行きたいんだけど、どう?」
日和からの誘い。断るわけがない。
「おー私も行く。いい?」
和葉が私もと子犬のようにはしゃぐ。
「で、春は?」
「行くよ。」
「それ私も行きたい。」
千鶴が言う。
こうしていつもの4人で行くことになった。
当日
集合時間10分前に着いた。
今日はまだ誰も来ていなかった。一番だとちょっと嬉しくなる。
5分後、手を振りながら日和がこっちに来る。
「おはよう。あれまだ二人来てないの?」
「うん。あの二人この前は早かったのにね。」
こんな話をして集合時間から15分過ぎた。
「あっ和葉からLINE来た。」
どれどれと日和にスマホの画面を見せてもらう。
「ごめん私用事があるの思い出しちゃって、だって。」
「なんか和葉らしいね。」
「あっこっちも千鶴からLINE来た。」
今度は私が日和にスマホの画面を見せる。
「熱出していけなくなっちゃった。ごめん、か。」
「確かに、千鶴は七月のテスト張り切ってたし疲れが出たのかな。」
そう話していると今度は電話がかかってきて、二人で映画見に行きなよと言われた。
え?いきなり二人?
そう思った途端4人で行く時も緊張していたのに、さらに緊張して手が震えてしまった。
「行こっか。」
「うん。」
大丈夫、返事は震えていなかった。
「面白かったね。」
日和は本当に面白かったようだが、私は映画に集中できなかったので実は面白かったかどうかわからない。でも、日和が言うのなら面白かったのだろう。
「うん。」
「だよね、やっぱり。私の推しがアクションやってたじゃん。あそこカッコよかったー。」
「そうだよね。あーアクションやってみたい。」
これは本当。映画を集中して見てはいなかったが雰囲気に飲み込まれたのか、私は日和を敵から守るみたいな妄想をしていた。
映画の後はカラオケに行った。
私は音痴で歌うのが下手だけど日和はそんな私の歌を手拍子とかをしながら聞いてくれた。
日和は高音も低音も出せてどんな歌でも曲調に合わせて可愛く、カッコよく歌っていた。
家に帰って例のリストを引き出しから出す。
『第一条 映画館に行く』の横に☑️を付けた。




