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どんとこい 東村山!  作者: Kくぼ
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5話 人間

 ゴンゴンという音がどんどん大きくなり、徳子は階段から離れて冷蔵庫の後ろに隠れました。流石に取って食われる事はないでしょうが一応用心です。


 ついに姿を現した西暦10022年の人間、その姿をみた徳子は思わず声が出そうになり口を手で抑えます。それは徳子が人間と呼んでいる生物とは全く違う生物でした。


 身長は3m、顔には目がありません。目があったと思われるところには横に線があり、長い年月で使わなくなって退化したように見えます。鼻と口はあり、息遣いが聞こえて来ます。手は二本、足も二本ですがかなり筋肉質です。相当な力持ちのように見えます。何かを抱えて登って来たようです。こっそり覗くとそれは大きな箱でした。


 徳子は見つからないように覗き見をしています。その生物は持ってきた箱を冷蔵庫の前に下ろして、冷蔵庫を開けて箱の蓋を開けて中身を冷蔵庫へ移していきます。そして冷蔵庫の蓋を閉めると、点滅していた赤いランプが消えました。冷蔵庫の補充に来たようでその仕事が終わったのか、徳子の方を向いてからその生物が話始めます。


「私は管理区域A3の鈴木という者です。随分と小さい身体をしておられますが、どのエリアから参られたのですか?」


 徳子は驚いて声が出ません。流暢な日本語です。しかも鈴木さん、日本で大体どこにでもいる鈴木さんです。


「あなたは何か懐かしい感じがします。お会いするのは初めてなのに不思議な感覚です」


 徳子は思い切って話しかけました。


「私は北条徳子と申します。この冷蔵庫の食料を食べてしまいました。おいくら払えばよろしいでしょうか?」


 な、何言ってるの私。いきなりそれ言う?すいません変な事を言って、と言おうと思い鈴木さんを見ると手が震えている。


「鈴木さん、どうかされましたか?」


「お名前をお持ちなのですね。それにどこかで聞いた事があるお名前です。我々の都市にお越しください。お名前をお持ちの方となればそのまま行かせるわけにも行きませんので」


「すいません、鈴木さん。お名前と仰っているのはフルネームの事ですか?」


 鈴木というのも名前のはずだ。そう名乗ったし。となると鈴木さんが名前と言っているのは姓ではなくて名前の方だろう。この時代の人には名前がないのだろうか?


「フルネームとはどういう意味の言葉でしょうか?」


「ええと、例えば私を例にとると姓が北条で名前が徳子という意味です」


「北条様の区域ではそういう風に呼ぶのでしょうか?鈴木というのは管理記号です。私の住むエリアにいる者は皆鈴木と言います」


「そうなのですか?区域ごとに姓が変わるという事は、道路の向こうは佐藤さんとか?」


「よくご存知で。その通りです。その向こうが山田で、その向こうが大塚です」


 なんじゃあそりゃーーーーーー!!!!!声には出さなかったが感情が伝わったのか鈴木は、


「ご存知だったわけではないようですね。そんなに動揺されるとは思いませんでした」


「すいません。なぜ私が動揺したのがお分かりになったのでしょうか?」


「仰る意味がわからないのですが」


「………………」


 徳子は考えています。この人には目がない。それなのに徳子の身体が小さいとか動揺を見抜ける。目がない分他の感覚が優れているのかもしれない。


「すいません。どうも私の感覚と鈴木さんの感覚が違っているみたいで、おかしな事を言って、いや違うぞ徳子。ここは正直に行こうぜ。鈴木さん。私は目が見えます。鈴木さんには目がありません。その違いだと思います」


「目というのはなんですか?」


 そっからかーーー。管理区域A3の人達には最初から目という概念がないのだ。8000年も経てば人類も変わるという事なのだろうか?目がなく身長が3mってやはり放射能による変異なのかもしれない。


「地下500mのところに鈴木さんの都市があるのですよね」


「はい。管理区域A3は独立したエリアです。A3にはお名前を持っている人はいませんが、区域長は他の区域とも交流がありますので是非会って行ってください」


「わかりました。それで鈴木さんはここへ何をしにきたのですか?」


「私の仕事の1つにこの冷蔵庫の管理があります。他の区域の方が調査に地上へ出られた時のための食料をご用意しております」


「お金は払わなくていいの?」


「北条様の区域ではまだお金が流通しているのですか?管理区域A3ではお金は必要ありません。全て無償ですよ。祥太朗様が管理されていて不公平の無いようになっています」


 ん?どこかで聞いたことのあるような名前が出てきたぞ!


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