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どんとこい 東村山!  作者: Kくぼ
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40話 2029年

 AIの結論では未来へ飛んだという。だけどどのくらいの未来なのかは想定できないそうだ。そりゃそうだよね、そんなデータないし。


「祥太郎。どれだけ時間をかけてもどのくらい未来へ行ったのかはわからないでしょう。事例がありませんので。誰か未来へ飛んだ人のデータでもあれば」


「流石にそれは無理じゃない?で、1つ疑問があるんだけど」


「何でしょうか?」


「そのエネルギーってどこから来たの?」


 未来へ人を飛ばすほどのエネルギー。そんな物どこから湧いたのか?


「推定ですが、北条徳子の持っている謎の物と何か未知の物が相乗効果を起こし巨大な電磁波を発生させたと思われます。現代の科学では未来へ飛ぶエネルギーを発生させることはできません」


「じゃあ徳子ちゃんが戻って来る事は?」


「不可能でしょう。過去に戻るためになにが必要なのか?仮になにかあったとしてもどの時間軸に戻すと言うのです?」


「もう一度会いたいんだ」


「嫁も子もいるのにですか?」


「おい、AI。お前なんか人間っぽいぞ。そういうのとは違うんだ。友達なんだよ」


「ではそういう事にしておきましょう。ですが不可能です。ただし」


「ん?ただし、なに?」


「今のレベルではです。何千年か経てば可能になるかもしれませんね」


 未来か。それが本当なら徳子ちゃんが持っていった猫のストラップに入っている謎の物は二度と手には入らない。もう徳子ちゃんをあてにはできない。核戦争を止めるには僕が開発するしかないんだ。





 2029年になった。戦争はまだ続いている。仕掛けたC国は周辺諸国からの経済制裁で追い詰められて来ていた。責められているT国も消耗が激しく長くは持ちそうもない。ついにT国への支援が武器弾薬に留まらず、兵隊まで加わり始めた。そうなると一国同士の争いではなく世界を巻き込んでの戦争となる。ニュースは第三次世界大戦へのトリガーが引かれたと大騒ぎだ。世界を引っ張ると日頃から言っている大国は沈黙している。


「ねえ、祥太郎。急がないとヤバイ。もう期限無い」


「真弓さん。わかってる、わかってるけどどうしてもわからないんだ。徳子ちゃんが持っている物が。元々は組織が作ったものなんだろう。なにかヒントくらいないのか?」


「装置の設計図は残っている。起動スイッチに関する資料は残っていない。開発した森博士は敵組織に殺された」


「敵組織、ZAGPだっけ。Zで始まるのってなんかいいよね。Zって最後のアルファべットだから終わりを意味しているのかな?」


「終わりから始まるという考えの組織です。我々は終わらせるのではなく継続させる事を目的としています」


「それが例のウィルスか」


 新ウィルスは猛威をふるい、短期間で変異を繰り返した。そしてついに人体に無毒のウィルスとなった。ウィルスによる死者は世界で1億人、かなりの人数ではあるもののこれで終息しては人口が減らない。70億の人口を10億まで減らさなければならないのだ。組織のねらいはワクチンだった。人類の80%の人がワクチンを接種した。副作用の出るワクチンだったが各国首脳が率先してワクチン接種を進めたため、副作用が出ても死ぬよりいいと洗脳された人達は迷う事なくワクチンを接種した。


 ワクチンは人間の抵抗力を少しずつ奪っていく。ワクチンを接種した人の10年後の予想生存率は50%、組織の人間は誰もワクチンを射っていない。ある国では、輸血血液の管理を始めた。ワクチンを射っていない人の血液を集め始めたのだ。


 世間では反ワクチン派が現れて騒ぎ始めている。呑気な平和主義者の連中だ。人の責任ばっかり言って自分の責任を考えない、徳子と出会う前の自分のようだ。祥太郎はなんで自分の人生がこんなに変わってしまったのか不思議だった。徳子の事件がなければ大学に受かっていないかもしれない。子供なんて持てる事もなかっただろう。そうだ、佑太郎!


「真弓さん。佑太郎はどこ行った?」


「AIと勉強中。研究室にさっき置いてきた。今日、父が来る。報告しないと」


 そうだった。戦争が拡大して組織は焦っている。各地にシェルターを作りそこに施設を移動したりしている。ワクチンを射たなくたって核ミサイルが飛んでくれば逃げる術はない。安全なところに隠れるしかないんだ。


 組織は今、新宿の都庁近く、中央公園の地下にシェルターを作っている。祥太郎の研究室も来月そこに引っ越す事になっている。


 祥太郎と真弓はいつもの王国ホテルの会議室へ向かった。そこに鈴木が来ているのだ。


「鈴木さん。先週どんとこい東村山!の地下室で実験を行いました。起動キーの95%まで電波が入り込みスイッチが入りました。ただ、東村山以外では85%までしか電波が届きません。中の構造が複雑で引っかかってしまうのです」


 装置の起動スイッチ、見た目は四角い箱だが中身は鍵になっている。迷路のような複雑な構造になっていて電波がそれを潜り抜け何箇所かあるスイッチを押さないと装置は起動しない。祥太郎の電波発生装置はAI を使い最善手を構築し作り上げたものだ。


「東村山以外では起動しない?それでは各国の装置は起動できない。核戦争を止められないぞ!」






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