20話 K国のスパイ
祥太郎が頭が痛いというとお姉さんは頭痛薬をくれました。祥太郎は迷わず薬を飲みます。信じていいのでしょうか?あのおじさんみたいに殺されるのか、とも思いましたが、殺すのならとっくに殺されてるし、毒殺はしないだろうと開き直りです。
薬は良く聞き、頭がスッキリしてきました。ヤバイ薬じゃなきゃいいけどと一瞬頭に過ぎりましたが今更気にしても仕方ありません。徳子との付き合いで性格が楽観的になってしまっている祥太郎でした。
「お姉さん。薬をありがとうございました。それで、僕は誘拐されたのでしょうか。僕は貧乏なので誘拐しても損ですよ」
お姉さんには冗談は通じなかった。
「聞きたい事があってきてもらった。お前も私を探してた、お互いに知りたい事がある」
お姉さんは日本語は通じるがあまり上手ではなさそうだ。やっぱり外国の人なんだろう。僕が尾行していた事を知っているようだけど、あのおばちゃんがグルって事はないよね。徳子ちゃんがいいおばちゃんだって言ってたし。
「それで、僕に聞きたい事ってなんでしょうか?」
お姉さんは黙ってしまった。なんで?聞きたい事があるって言ってたのに。お姉さんは電話をし始めた。何語だろう?なんとなくK国語のような気がする。流行りのドラマで聞いた言葉が出てきた。意味は確か、
「殺せ!」
あかーーん、それは俗に言うあかんやつです。僕は食べても美味しくないよ。お姉さんをみると電話で口論をしている。口調が激しくなり大声になる。早口で全然わからないが抵抗しているみたいだ。電話は10分くらい続いた。そして、
「祖国、お前を殺せと言う。私、お前を殺さない。だから話せ」
お姉さんはなんでかはわからないが僕を庇ってくれていたようだ。でも何を話せばいいのか?
祥太郎は自分の事を話した。生まれ、趣味、浪人生である事。そして知り合いの女の子が行方不明の事。お姉さんが知りたいのは、あの穴についてだった。なぜ穴が空いたのか?なぜ私を尾行したのか?警察が探している少女の事、だった。
その少女と祥太郎の知り合いの女の子は同一人物、北条徳子だ。
「それで徳子ちゃんが行方不明になったタイミングと穴ができたタイミングが一致しているのです。あの死んだおじさんが見た女の子が多分徳子ちゃんです。警察によると他に南村山高校で居なくなった人はいないそうです」
祥太郎はサモジの佐々木さんからそれを聞き出していました。つまり消去法で消えた少女は徳子ということになります。
「やはりそうだ。その女だ。その女のせいで装置が作動してしまったのだ!」
「装置?何の事ですか?」
祥太郎はしゃべってから気付きます。装置、穴、行方不明。徳子ちゃんが何か秘密の装置のトリガーを引いてしまった。それはこのお姉さんの祖国の何か秘密の装置!
「お前、その女を探している。私もだ。見つけないと大変な事になる。仲間になれ」
ちょっと待ってよお姉さん。こんな歌なかったっけ、ないか。それはともかく国の名前もわかんないし仲間になれって言われても。しかもさっきまで殺すとか言ってたじゃん。
「お前、弟に似ている。殺したくない、仲間になれば殺されない」
それで助けてくれたのか。だけど祖国ってどこ?僕日本を裏切って他国のスパイ?諜報員?もしかして戦闘員、イー! みたいなやつ?それはともかく流石にうんとは言えません。
「仲間になれと言われても何の?まずはそこから教えてください」
お姉さんの名前は真弓と言った。日本用の名前で本名は無いとのことでした。祖国というのはやはりアジアのK国。真弓さんはK国の工作員だそうだ。工作員かあ、さっきの全部違った。それはともかく、お姉さんは徳子ちゃんを探さなければならなくて困っていたらしい。
あのおじさんが殺されたのも、穴が開いた原因を調べているうちについ殺してしまったそうだ。尋問したのが短気な工作員だった事もあって事件になってしまった。このままではまずいとその工作員は組織が処分したそうだ。組織は国会議員と繋がっていて警察上部にこれで一件落着にするよう圧力をかけたらしい。明日にはもう事件は無かった事になるという。
「わかりました。それで徳子ちゃんを探している理由を教えてください。それが納得できれば仲間になります」
お姉さんは、キリッと祥太郎をキツイ目でみた。もしかして聞かれたく無かったとか?
「その徳子という女がある物を手に入れた。それは…………、」
「それは?」
「今はそれが祖国にとって大事なものとしか言えない。それを回収しないと大変な事になるのだ。頼む、一緒に探してくれ」
徳子ちゃんが手に入れた物?食べ物くらいしか想像できないけど。そもそもどこで買ったのよ。お姉さんは真剣に頼んできている。このお姉さんのおかげで命も助かった事だし協力しない理由はないよね。協力しないと殺されてしまうかもだし。
「わかりました。協力します。それでここはどこですか?」
「どんとこい東村山!の地下室だ」
えっ、そんなのがあったの?