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どんとこい 東村山!  作者: Kくぼ
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18話 ここだーーー!ここが東村山だー!

 徳子はひび割れた徳という字の上にしばらく座り込んでいましたが周りは人っ子ひとりいない静けさです。空は相変わらず曇っていて太陽っていつ出るのって感じです。気を取直して立ち上がります。


「まあ座ってても仕方ないだわさ。夕方までに戻らないとだし、ええと時間は、と」


 徳子はスマホを見ます。まだ午前11時、時間はあります。


「太陽ってあるのよね、お日さま全然見れてないけど明るいって事は時間合ってるってことよね。ええと、ここが街道。右に曲がると祥太郎さんのアパートか。行ってみますか絶対何もないけど」


 真っ直ぐ歩くと街道にぶつかりました。徳子は、


「あ、あたいここで目覚めたんだ。それで向こうっていうか東に行ったのよね。西に行ったらアパートだったのか」


 そのまま西へ向かいます。アパートまでの道は毎日通った勝手知ったる道のはずでしたが、目に映るのは知らない景色です。身体が歩く距離を覚えています。アパートはここです。


「更地、か。8000年も経ってアパートあった方が驚くっしょ。さて、別に何もないわよね?」


 一応更地の上を歩いてみます。何もないことを確認した後、街道を戻って行きます。ここに住んでた祥太郎さんはやはり関係ないようです。まだわからない事だらけですがそのうちに何か見えてくる気がします。ここから西へ進むと街から出てしまいそうなので行くのをやめました。魔獣とかに襲われたら嫌だし。そのまま街道を進み、踏切があったわよねここ、なんて思いながらただの道を進みます。そういえば信号機がありません。道路は車が走れそうな道幅ですが自動車も自転車もどこにもありません。考えたら鈴木さん達の体型だと、自動車もすごい大きさになるからこの道幅では無理そうです。


 つまり、この道路は鈴木さん達人類、大きい人達が現れる前の遺産という事なのでしょうか?


 徳子はそのまま歩いて行きます。真っ直ぐ行くと学校に着くはずです。景色は同じような崩れたビルばかり、面白くありません。風は生暖かいし、これで太陽でも出てれば日向ぼっこしてお昼寝でもしたいところですが、公園のようなところもないし、お日様も出ていません。ふと、風が左側から吹いてくる事に気付きました。あれ?っと思い左をみると、見慣れた建屋がのこっていました。その名も、


「どんとこい東村山!」


 徳子は叫んで走り出しました。





 近くでよく見ると似て非なる建屋でした。どんとこい東村山!とは、東村山高校の学生御用達の駄菓子屋です。学校帰りにお菓子やジュースを買う昔ながらの名店です。近くにコンビニが出来ようが駅前に大手スーパーが出来ようが、東村山高校の学生はこの、どんとこい東村山で買い物をしていました。それはここにいた名物おばちゃんの人柄によるものです。時には人生相談にも乗ってくれますし、このおばちゃんと話すと元気が貰えるのです。徳子も常連でほぼ毎日お店には顔をだしていました。


 そのお店が形は違うものの残っていたのです。看板には字がもう掠れていますが、かろうじてどんとこい東村山と読めます。


「ここだーーー!ここが東村山だ!」


 徳子は大声で叫びました。間違いありません。ここは徳子がいた世界の8000年後の未来です。


 興奮して涙が溢れてきて止まりません。




 気分が落ち着いたので、徳子は店の中に入ってみる事にしました。どんとこい東村山は明らかに建て直されています。それがいつなのか、誰なのか?徳子は知りたくて仕方ありません。


「こんにちは〜、おじゃましま〜す」


 誰もいないとわかっていてもそこは礼儀正しい日本人。きちんとしないとです。入り口は徳子達のサイズです。鈴木さん達では店先には入れません。つまり、そういう事ですね。店頭には何も置いてありませんでした。昔、徳子が通っていた店先に似てはいますが立て直した時に改修したのでしょう、前よりも広くなっています。


「ピピーーン!こ、この感覚は!な〜んてね。アニメの見過ぎっしょ。でも何か違和感感じるのよね。ここだけ時間が止まっているような」


 確かに周りの崩れたビル群とはこの建物だけ毛色が違います。徳子はさらに建物の中に入って行きます。最初の部屋は洋間でした。床の板が腐って穴が開いています。次の部屋は床の間だったようで昔畳だったようなカスみたいなボロボロの草見たいのがあってその下が見えていています。


「あれ、何かあるだわさ。なんだわさ?」


 畳を捲るとそこに隠し扉が、という設定だったようです。今は丸見えですが。扉は鉄みたいな金属でできていてハンドルを回して開け閉めするタイプでした。


「これってシェルターってやつ?あのおばちゃん学生からお金集めてこんなの作ってたのか?」


 流石にそれはないか、おばちゃん長生きしたそうにも見えなかったし。徳子は扉を開けようとハンドルを握りました。

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