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どんとこい 東村山!  作者: Kくぼ
17/47

17話 徳

 徳子はスマホのマップを見ながら唸っています。


「ここが本当に未来の東村山市だとしたら、なんか痕跡が残っていてもいいと思うんだけどなあ。そもそもここが市役所だとしたらって、市役所ってどこだっけ?」


 徳子は東村山高校へは北部線の電車に乗って通学していました。実際は小平市民です。なので東村山市役所の場所はうろ覚えでした。


「確か学校の裏から県境の方へ行ったところだったような。て事はですよ徳子さん。学校はこっちで駅はあっちですね」


「そうですね徳子さん。まずは駅じゃあないですか?なんかあるかもしれませんぜ」


「合点承知の助だわさ」


 という一人芝居を無人の街中で繰り広げたあと、駅と思われる方向へと歩き始めます。偶然鈴木さんが歩いていった方向です。あれっと思ってもう一度スマホのマップを起動します。管理区域A3が表示されていました。


「ええと、駅は管理区域A3の向こう側だね。てことは最初の日に歩いてきたあたりって事か」


 方向でいうと駅から見て東の方向に東村山高校があり、市役所は北東方向でした。つまり徳子はこれから駅に向かって南西に進みます。一度歩いた道ですがあの時は何がなんだか分からず探索していたので、過去の痕跡を探せ!なんてテーマで見ていませんでした。歩きながら周りをキョロキョロ見て進みます。見えるのは未来都市の残骸でしかありません。立派な道路が崩れた、立派なビルが崩れた、ただの残骸です。徳子の知っている必然村山市は駅前こそボーリング場や商店街、大手スーパーがありましたが、駅を少し離れると普通の住宅街と田んぼです。見た目が全く違いすぎてとても東村山市とは思えません。


「やっぱり別の世界なのかな。パラレルワールドだっけ」


 とりあえず歩いていると多分ここら辺が駅だったんだ劇場ではなく、駅だったと思われるあたりに着きました。


「なんとなく雰囲気が似ている気がする。バス停がそこでタクシー乗り場がそこで」


 ロータリーのような感じになっているところがありました。車を停めるスペースもあり、他の場所とは違っています。同じ東村山駅かはわかりませんが、駅があったところに駅っぽい雰囲気の物が残っていました。


「仮にここを駅だとしよう。とすると駅前には何があったかね徳子君」


「はい、徳子先生。駅の向こう側にはボーリング場があって、あああああああ!!!」


 徳子は一人芝居の途中で思い出しました。そうです、駅近くのボーリング場が見えるあの場所、あそこで地震にあったのです。あそこは今どうなっているのでしょうか?地震で街が崩れて全部立て直したからわからなくなっているのかも?徳子の脳みそはパンク状態です。


 徳子はあの地震がたまたま徳子のいた場所のそう、超極小場所で起きた物で周囲に影響がほとんどなかった事を知りません。地震にあった本人はただただ必死でした。ですのであの大地震で東京が壊滅した可能性もあると思っています。


 駅の向こうに行くには階段を登って線路を越えて向こう側を降りるはずですが、平らです。線路の面影すらありません。市長が北部線を知らなかったのですから当然ですけどね。北部線の親会社である北部観光ホールディングスはプロ野球球団を持っています。そのため、電車の中は野球の宣伝が多く電車に乗っているだけでファンにさせられそうな感じでしたが徳子にはそんな洗脳は効きません。なので北部ファンではないのですが、今はそれが懐かしくもあります。


「一回くらいは野球観に行っても良かったかな。まさか無くなるなんてね。推しは推せる時に推せ、とかなんかで見たことあるけどこういう事?」


 線路だったはずのところを普通に通過して見渡します。まずボーリング場は当然ありませんし、面影もありません。


「ここがボーリング場よね。てことはあたいが地震にあったのは、あっちか」


 ボーリング場跡と思われる場所からゆっくりと歩いていきます。地震にあった場所、多分あそこら辺です。


「確か地震で揺れてる時にボーリング場から出てきたうちの生徒が見えたから、私が地震にあったのってあそこらだよねって、なんか見えるぞ」


 徳子が地震にあったと思われる場所、そこの地面というかアスファルトに字が書いてありました。アスファルトは風化によるものなのかひび割れていて原型とは変わってはいましたが、徳子にはその時がなんて書いてあるのかが読み取れました。


「なんじゃこりゃ!!!!!」


 その字は徳と読めます。


 徳子はその上に立ってから座り込みました。どういう事?これって私の事よね。誰が何のために、しかもいつ書いたの?


 よく見ると徳という字はアスファルトの上に書かれたものではなく、アスファルト自体に色がつけられていました。金太郎飴みたいに表面が削れても削れても字が中から出てくる仕組みです。


「これよーく考えただわさ。地面が擦り切れて無くなるまで字が残る。作者の愛を感じる作品ですわね、すばらしいですわ。オホホホホ、ってなんで徳なのよ、誰なのよ作ったの!しかも結局ひび割れちゃってちゃんと読めないじゃないのさ!」


何なのよこれ!


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