1話 転生したら?
「イヤー夏はやっぱこれだね、キンキンに冷えたカキ氷って冷えてないカキ氷なんかあるのかよって一人ツッコミ」
北条徳子。17歳の女子高生、161cm、48kg、上から86、58、84のナイスバディだ。彼氏はいない。顔はそばかすが多く、眼鏡っ娘、いわゆる顔を見なければいい女という天は二物を与えなかったパターンの典型的女子高生だった。
古い言葉で言うとマニアック、今風にいうとオタク、じゃないサブカルチャーの人だと自分では思っている。好奇心旺盛で広く浅く知識があるタイプだが、心底惚れるとのめり込んでしまい結構大変なのである。
北条という姓は気に入っている。もちろん鎌倉幕府や小田原城とはなんも関係がない、というか聞いた事がある程度でよくは知らないし興味がない。親の出身地は神奈川県だけどきっと偶然だろうし歴史にはあんまり興味がない。徳子は今、地球物理学と異世界転生にはまっている。
徳子は都下立東村山高校の2年生だ。部活はやってないので授業が終わるとさっさと帰宅モードに入る。と言っても家にまっすぐ帰るわけではない。オタクじゃないサブカル仲間の浪人生、神宮寺祥太朗のアパートによって行くのが日課だ。神宮寺祥太朗は、異世界転生が大好きすぎて大学で異世界転生を研究したいと思っているちょっとネジが足りない浪人生だ。
「徳子さんや。毎日来てくれるのは嬉しいんだけど、一応俺、浪人生だし独身だし、その色々と溜まってるし………」
「ほう、この徳子さんのナイスバディーが目の前にあると勉強に集中できないのかい。そうでしょうそうでしょう」
「というより煩くて集中できない」
「酷い!あんまりだわ、プンプン」
「プンプン言うだけで全然怒ってないじゃん。勝手にカキ氷作るしおやつは食べるし」
祥太朗の部屋にはなぜか手で回すカキ氷機がある。これにコンビニで買ってきた氷を使って削ると本当に美味しいカキ氷ができるのだ。
2人はネットで知り合った。決して恋人ではなくただの友人、と2人とも強調するのできっとそうなのでしょう。ただ結構仲が良く、祥太朗も文句は言いながらも徳子との会話を楽しんでいます。
夕方になり、また来るね〜とアパートを出て北武線の東村山駅に向かう途中、急に地震が発生しました。
日本は地震国で、それは列島が数々のプレートに囲まれているところからきている。今も海の下ではプレートが沈んだり戻ったりしていてこれが沈み続けて溜まりに溜まってから戻ると大地震が起こる。ところが今徳子の周りに起きているのはなんとかプレートとか活断層とかとは関係なく別の力による地震でした。
徳子の周囲5mだけ揺れています。50m先のボーリング場から徳子と同じ制服を着た女子高生4人組がちょうど出てきて徳子を不思議そうに見ています。
「ねえ、あれ徳子じゃない?」
「何やってんのあいつ。変わった子だとは思っていたけど、一人で揺れてるよ」
徳子はそれどころじゃありません。視界に入った女子高生4人組は普通に立っています。
「すごい揺れ、震度いくつ、しんどい靴、なんちゃって。なに、これ?向こうは揺れてないみたい、えっ、回ってる?」
徳子の身体が駒のように回り始めました。そしてそのまま姿が消えてしまいました。