ポーカーフェイスで美人の先輩は俺の声が好きらしくて家庭教師の対価に指定のセリフを言えと言ってくる
「なろうラジオ大賞4」応募作品です。
コメディー。ただただ聴きたくて書きました笑
『悠衣子、こっちおいで』
「ふぎゃぷわぁーーっ!!」
あんなにポーカーフェイスで美人の先輩が白目むきながらヤバい叫び声をあげている。
なんでこうなったかと言うと……、
「ヤバい! このままじゃ赤点&追試だ!」
今度のテストの勉強をしているのだが、まったく頭に入ってこない。
もはや何が分からないか分からないのだ。
ピンポーン。
俺が頭を抱えているとインターフォンが鳴った。
「あ、そうだった。今日は姉貴の友達が勉強を教えてくれるんだった」
昨日、姉に泣きついたら頭の良い友人を紹介してくれることになったのだった。
「はーい……って、巽先輩っ!?」
「こんにちは」
そこにいたのは俺が密かに憧れていた巽先輩だった。
クールな美人という俺のど真ん中を貫いてくる巽先輩。ポーカーフェイスな所もまたいい!
「……で、こうなるの」
「なるほど! やっと分かった!」
そして、先輩は教えるのも上手かった。
俺は憧れの先輩と二人きりで勉強を教えてもらえて有頂天だった。
「……紘くんさ。良い声してるよね」
「え? あ、ありがとうございます」
「てかさ! めっちゃ好きな声なんだよね!」
「せ、先輩?」
「いやマジさ! ど真ん中ドストレート150km豪速球ハイ! ストラーイク!」
「せ、先輩。落ち着いて! 帰ってきて!」
「はぁはぁ。ご、ごめん。取り乱したわ」
……憧れのポーカーフェイスクール美人の先輩。
「ちょ、ちょっとこれ、読んでみて」
先輩は紙に何やら言葉を書いて渡してきた。
「え? えーと」
「あ、枕詞に『悠衣子』をお忘れなく」
「は、はぁ。えーと、
『悠衣子。俺の全てをかけて君を守ろう』」
「ふんぎゃっぽーん!!」
「先輩っ!?」
先輩は白目むきながら後ろに倒れて盛大に後頭部を床に強打していた。
「じゃ、じゃあ、次はこれ。
悪役令嬢に転生した瞬間に婚約破棄されて、お庭で泣いてたら第一王子が来て、そっと抱きしめてくれた時みたいによろ」
「え、と、先輩?」
「私は君に勉強を教える。君は私の書いたセリフを読む。等価交換。オーケーベイベー?」
「べ、べいべー」
「はい、どうぞ」
『ゆ、悠衣子。私が君の側にいる。それじゃダメか?』
「ぜんぜんいーーーよーーーっ!!!」
「先輩! 鼻血!」
「『拭いてやるよ』って言ってーー!」
「お、おおう」
結局、何とか赤点は回避できたけど、先輩の家庭教師はいまだに続いている。
先輩の鼻血やヨダレを拭いてあげるのは大変だけど、じつはあんまり嫌でもないってことは内緒だ。