転生・Ⅱ
··どれほどの時間が経っただろうか。
俺と俺の心をを包み込んでいた昏い闇は完全に払われ、いつしか温もりある暖かな光に満ちた空間に変わっていた。俺はその中をゆっくり、時々立ち止まりながらもゆっくり歩いている。とても長い時間そうしているようだが、不思議と疲れは感じない。
いつまで俺は歩き続けるのか、それは分からないが、俺の進む先がどこにつながっているのかは直感的に分かる。曰く、新たな世界に。新たに生を受ける世界に向けて、俺は歩いているのだ。
これまでの俺の人生は褒められたものではない。寧ろ詰られて当然のものだ。自分の能力の低さから目をそらし、過去の成功に執着し、現実逃避の限りを尽くした。慰めにひたすら縋り、挙句の果てに醜いプライドの殻に籠った。俺と俺の穢れた心は何も成さなかった。
でも、もう一度、やり直せるなら。
もう一回、やり直せるなら。
新たな世界で俺はどのような人生を送るのだろうか?
俺は誇らしい人生を送れるだろうか?
··ついに時は来た。
そう感じ俺は歩みを止めた。それと同時に周囲一帯が眩い光に包まれ、転生の時が近いことを予感させる。この場所で過ごす時間も残り僅かだ。最後に俺は新しい人生での絶対事項を、守るべきアイデンティティを胸に決めた。
「目の前の事実から、現実から目を背けない。」
新たなる世界への希望を握りしめ、俺は光の中へ再び歩み始めた。
··瞬間、俺の視界と思考はホワイトアウトした。