乱闘
(クソッ!同時に攻めるとか卑怯だろ)
スライムは危機的状況になり、若干イラつきながら『アシッドバレット』を何回も放つ。
しかし、いくら知能の低いモンスターでもクイックラット達は最初の突進を避けられており、ただ突っ込むだけでは駄目だという事は理解している。
飛んできた『アシッドバレット』を危険と判断して一斉に避ける。
(チッ!避けやがって)
口が無いため心の中で舌打ちしながらも、次をどうするか考える。
幸いクイックラット達もスライムを警戒しているのか、すぐには攻撃してこない。
今までは、一匹だけで警戒もせずただ突っ込んで来たおかげで簡単に倒す事が出来た。
しかし、今回はクイックラットの数が5匹もおり、更にはスライムが自分達を倒せる実力があるという事を理解して迂闊に攻撃して来ない。
今まで使ってきた戦法は使えない。
そもそも複数の敵が来たのはこれが初めてで、その事を想定していなかった。
それでも、あちらが攻撃して来ない内にこちらから仕掛けようと行動する。
クイックラットは突進が厄介なだけで能力的にはそんなに強く無い。
ならば、近づいて懐に入り込み、魔法を使えば倒せる。と考え、スライムは体を屈めてほぼ垂直に進む様に飛び出した。
クイックラット達はスライムが動き出した事を知り、無闇に突進せず、相手の出方を確認しようとする。
スライムは敵が攻撃してこず、反撃しようとしている事が分かり、まずは『アシッドバレット』を全員に当たる様5回分発動する。
難なく横に飛び躱されるが、初めから避ける事はわかっており、着地しようとする場所に素早く『アシッドショット』を放った。
「「ヂュヴアァァァァ!」」
想定通りに上手く当たった2匹のクイックラットは皮膚が溶け、あまりの痛さに悲鳴を上げる。
しかし『アシッドショット』は『アシッドバレット』より少し大きく、当たる範囲は広いが、出来上がるまでのスピードと敵に当たるまでのスピードが遅い。
そのせいで2匹しか当たらず残りの3匹はしっかりと避けていた。
(クソッ!全員には当たんねぇか。おっ、ようやく使ってきたか!)
真ん中にいた1匹は負傷した奴らの前に出てこれ以上攻撃されない様、守りに徹する。
そして2匹は仲間がやられた事に怒ってしまい、スキル『突進』を使ってしまう。
その事にスライムは喜ぶ。
スライムは基本的に俊敏が低い。ジャンプ出来るとはいえ、数字で見ればクイックラットの方が高い。
そのままスキルを使わず、複数で追い詰めれば勝機はあったかも知れないがそこまでの考えには至らなかった。
『突進』を使ってくれるお陰でいつもの戦いがてきる。
「「チュウゥゥゥゥ」」
スライムはクイックラットが赤く光るのを見て、『アシッドウォール』横一列に二つを出す。
距離が近かったが間に合い、酸に自らかかった2匹は勢いを無くし痛みで同時に叫ぶ。
「「チュヴアァァァァ!」」
(よっしゃ。掛かったな。これでも喰らえ!)
スライムは他の仲間達が来るかもしれないと思い、容赦なく『アシッドショット』を2匹分息の根が止まるまで放とうとする。
しかし2匹とも後一発で仕留めれるといった所でまだ無傷の奴が邪魔をする為にこちらに走ってくる。
『アシッドバレット』を撃っても横に躱し、止める事が出来ず噛みつかれそうになるが、スライムもジャンプして避けた。
噛みつきには避ける事が出来たが先程の『アシッドショット』で負傷した2匹はジャンプした事を確認するとすぐさま『突進』を発動させ、同時に空中にいるスライムに向かってぶつかる。
(がっ!痛ってぇなぁ!)
2匹同時に突き飛ばされたせいでかなりの距離が離れた。
ステータスを見るとHPが134/144と表示されていた。
(くそ!流石にノーダメで倒す事は出来ないか。それにスキル使いすぎて疲れて来てる。まだHPは余裕あるが油断してると痛い目に遭うかもしてないしな)
速やかに敵を排除しようと考え、全速力で跳んで行く。
それを見てクイックラット達は威嚇する様に鳴き声を上げる。
「「「「「チュウゥゥゥゥ」」」」」
(オラっ!これでも喰らえ!)
スライムは『アシッドショット』を敵に向けて連射し広範囲に撒き散らす。
クイックラット達は一斉に避け、次に来る攻撃を警戒した。そして直ぐに飛んできた『アシッドバレット』も余裕で躱す。
(チッ!ネズミのくせに学習してきたか。そのまま死ねば良いのに)
スライムが悪態をついていると、クイックラット達は反撃しようと逆三角形の形をしながら走り出した。
先頭には無傷の奴がおり、一番初めに噛みつこうとしてくるが難なく避ける。
しかしそれだけでは終わらず、いつの間にか後ろに回り込んだ他のクイックラットが噛み付いて来た。
(ぐっ!この野郎、放しやがれ!)
油断したせいで、体の一部を噛みちぎられる。
幸い、スライムは魔力で出来ているおかげで血を流す事なく、また痛みも感じる事は無かった。
それでも体の一部、つまり魔力を失った事になり、HPは124/144になっていた。
クイックラット達は、更に追い詰めようと同じようにスライムを囲い込む様に走る。
(このままじゃ、もしかしたら負けるかもな。だがそうなる前に俺がお前らを先に殺してやる!『アシッドウォール』!)
自分を中心に五角形の形に酸の壁を出し、攻撃させない様にする。
もちろん目の前に酸がある事はわかっている5匹は動かずこの壁が無くなる瞬間を狙おうと待つ。
しかしスライムはクイックラット達がいる方の壁に向かって『アシッドバレット』を撃つ。
『アシッドウォール』は文字通り壁だ。しかしその材質が酸なのであるなら、物を遮るという壁の役割を果たせる事ができない。
そこでスライムは壁越しだろうが同じ酸であるアシッド系のスキルは威力が落ちたり、スピードが失われたりなどはしないのでは?と考え、試しに放った。
そしてその仮説は正しく、クイックラット達は壁から放たれる緑色の弾に驚き、慌てて避けようとする。
1匹も当たらず、なんとか避けれたクイックラット達は『アシッドウォール』が消えたのを見て、スライムを倒そうと走る。
それを見たスライムは上に思いっきり跳んだ。
(くっそ!1匹位当たっても良いだろうが!マジでこのまま行くとMP切れで死ぬかもな)
何とかしようと考える。
そこでクイックラット達がスライムを包囲して追い詰めた様に自分も敵を一箇所にまとめれたらと考えた結果、良い事を思いついた。
さっきまで自分がいた所に着いた奴らを見下ろしながら、そこから出られない様に外側に『アシッドウォール』を大量発射する。
クイックラットはいきなり後ろから酸が吹き出して驚き、そして完全に閉じ込められた事を認識し、焦りぐるぐると動き回る。
そこに上空にいるスライムは容赦なく『アシッドショット』と『アシッドバレット』を体力が続く限り放ちまくる。
(これでくたばりやがれ!オラっ、オラっ、オラっ、オラっ、オラっ!)
「チュヴゥアァァァァ!」「チュヴアァァァァ!」「ヂイィアァァァァ!」「ヂュヴゥゥヴゥゥゥゥ!」「ヂュゥヴゥゥゥゥ!」
酸を大量に浴び、皮膚が溶け、肉、骨、神経まで全てドロドロに溶ける。毛がいくらあろうが、『突進』に耐える為の肉や骨がいくら頑丈だろうが意味は無い。
「「「「「ヂュヴゥゥゥゥ」」」」」
あまりの痛みに命の危機を感じたのか、みんな一斉に悲鳴を上げ泣き叫びここから一刻も早く逃げようと、まだ動く足を伸ばし、ダンジョンの奥へと走ろうとする。
しかし逃げる事は出来なかった。
スライムは逃亡を見逃すはずも無く、酸まみれの地面に着地し、『アシッドウォール』で足止めを行う。
(はぁ、はぁ、待ちやがれ!)
それを横に移動し避けて進もうとする奴に『アシッドバレット』を撃つ。
魔法を使いすぎて、後どの位MPが残っているか心配になるが、ここで逃げられたら今までの成果が無くなる。
無駄にさせない為にスキルを放った。
幸い、体が溶けているからなのか、それとも恐怖のせいなのかは分からないが奥に真っ直ぐ向かって行くおかげで簡単に当たる事が出来た。
直撃したクイックラット達は心臓まで溶かされ、悲鳴を上げることすら出来ず全身グチャグチャのまま倒れ、死んでいく。
「「「「「ぢゅぅ……__」」」」」
〈レベルが上がりました。〉
〈『酸魔法』のレベルが上がりました。〉
〈魔法『アシッドボム』を獲得しました。〉
(はあぁ。疲れたぁ〜。まさかこんなに苦戦するとは。数の力を舐めてたな。)
少し息を切らしながら、自分の過ちを反省する。
途中でクイックラットを包囲し一方的に攻撃する策わ思いつかなければ、危なかったかも知れない。
だが、今は勝った事を喜ぼうと頭を振り、切り替える。
(しっかし、あれだけ苦労してレベルは1しか上がらないのか。まぁ、スキルのレベルも上がったし、新しいスキルも獲得したから良いか。)
ステータスを開き、何か変わった事を確認する。
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名前:なし
レベル:22
種族:アシッドスライム
HP:124/147
MP:302/606
攻撃:40
防御:40
俊敏:13
知力:101
種族スキル:『魔力生命体』
スキル:『魔力感知』『酸魔法Lv3』『水魔法Lv1』『再生Lv1』
ユニークスキル:『進化の可能性』
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新魔法の詳細を見たいと念じる。
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『アシッドボム』
酸を生成して凝縮した物を発射し、地面についた時爆散する。レベルによって威力や距離が変わる。
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(どんくらい変わったのかは後で確かめよう。それより、『アシッドボム』は今回みたいな複数戦にもってこいだな。油断はしないがこれで少しは楽に殲滅する事ができる。)
魔法の確認をしたら今度はMP表示の所を見た。
(おぉ、魔法、打ちまくったけど半分しかへってないんだな。あの時、死体を喰べといて良かった。じゃなきゃ今頃ネズミ共に食い殺されてたかもしれないな。忘れる前にさっさと喰おう。)
さっきの戦いでだいぶMPが減ったのでその分を補給しようとする。
スライムはドロドロの死体を5体分全て体内に入れ、MPは500入り、上限値共に702になった。




