なんか転生した。
暗く、明かりが無いと奥が見えない洞窟。
だが、真っ暗なわけではなく洞窟の入り口から入る光でわずかに明るくなっている。
それでも人の目では見えづらく、夜目の利く動物ではないと奥の方は暗闇で明かりを持たない者は行く気にはならないだろう。
そんな洞窟の中をピョンピョンと跳ねながら奥へと進む者がいる。
一匹の青いスライムだ。
そのスライムは紺色に近いくらい青が濃く、体の中心には体よりも濃く青みがかった黒色の玉がある。
その玉はコアと言われ、スライムの心臓の役割を果たしている部分でこれを壊されたり、取り除かれたりしたら生命活動が機能しなくなり死に至る。
一般的にスライムはその特性上、子供でも道具や武器があれば簡単に倒せる弱い種族とされている。
しかし魔物であるスライムは進化する事で色々な能力を習得し、武器を持った大人を軽々しく打ちのめすことや村や街を壊滅させる程の脅威になる事があると言われている。
そんなスライムは人や魔物に襲われることを恐れていないのかそれとも自分の強さに自信があるのかどんどん奥へと躊躇いなく進んで行く。
しばらく洞窟の通路を進んでいるとスライムは自分より遥かに大きく広い部屋に着きちょうど真ん中で止まった。
そこでスライムはブルブルと震え出す。
その瞬間、体が膨張し部屋を覆い尽くす程大きくなっていった。
それだけでは終わらず横に伸び、そのまま真ん中からさけるように縦に割れ、一匹のスライムから二匹のスライムへと分裂していった。
二匹のスライムは最初のより半分くらいの大きさで色が薄くなっていた。
さらに二匹共さっきと同じ様に縦に割れ分裂し小さく薄くなる。それをもう一回繰り返し合計八匹になった所で止まった。
スライムには生殖器は無くまた、オス、メスなどの区別も無い。
しかしスライムは絶滅する事も無く世界中の何処にでも生息しており、今でも増え続けている。
それはスライムの種族スキル<分裂>で繁殖していたからである。
スキルで分裂し終わったスライムにはそれぞれの自我があり、プルプルと振るえたり食べ物を求めて洞窟から出ていったりと元が一匹とは思えない程、七匹のスライムは各自自由に行動している。
しかし分裂してから未だに動かず、まるで魂が抜き取られた様にその場で固まっている者がいた。
しばらく時間が経つとそのスライムは突然、暗い洞窟が辺り一面真っ白になるくらい光り出した。
(ん、うぅー今何時だ?)
そのスライムは形を変え触手みたいな物を出し、何かを掴む様な動作をする。
(はっ、今日は月曜だ!…………って、あれ?ここ何処だ?)
スライムは目を覚まし周囲を確認した。
目に映るのは土や石で出来た地面と壁。自分が今いる場所が洞窟だという事はすぐに理解できた。
しかし、何故こんな所に居るのかはさっぱり理解出来ず、戸惑っていた。
(どういう事だ?俺は昨日、家に帰って疲れたからそのままベッドでねたはすだ。何かのドッキリか?それともまだ夢の中か?というか地面近いな。うつ伏せのまま寝てたのか)
そう思いながらもまずは、体を起こすように足を動かそうとする。しかし思い通りにはならず、まるで足がないかの様に何もできなかった。
彼は起きたら突然知らぬ場所におり、状況が掴めないままでまだ自分の姿がスライムだと気づいておらず、こうなる事は当然の結果だった。
(はぁ!?なんで動かないんだよ!怪我でもしたのか?いや、でも痛みは感じないな。どうなってんだ?)
何とか動かそうとジタバタしてると、視界に触手の様な水色の何かが映った。
(何だこれ?なんでこんな所にゼリーがあるんだよ。いや、どちらかと言うと実験で作ったスライムに近いな)
もっと近くで詳しく見たいと思い体を動かそうとすると、なぜか水色の何かが自分の意思に従う様に近づいてくる。
試しに右へと向く様に意識する。するとその触手は右へと向く。左に向く様に意識すると、左に向く。
(なんで触手が思い通りに動くんだ?…… もしかしてこの触手は俺の体の一部なのか!? 待てよ、もしそうだとすると…… 俺はこの水色のスライムみたいなやつになってんのか?……いやいやあり得ない、そんな訳無いだろう。ラノベやマンガじゃあるまいし。実際、転生というか、死んだ記憶なんてねぇし。 いやでもそうだとすると手足が動かないのはそもそも手足が無いからと説明できる。……もしかして、本当にスライムになったのか?!)
彼はようやく自分がスライムだと認識した。
しかしそんな不思議な事をすんなり受け入れるはずも無くしばらく混乱していた。
もしかすると、これは夢かもしれないと希望を願うが、
ピコン
〈⬛︎⬛︎ ⬛︎⬛︎がスライムに転生し、魂の定着が完了しました。〉
そんな希望を打ち砕く声が脳内に響いた。
こうして一人の男がなにも分からずスライムに転生した。




