83 盗人の行方
ノア曰く、盗人の情報はどうやら道具屋から得ることができたらしい。
確かに質屋以外にも自身のアイテムを売れる場所は複数存在する。道具屋もその中の一つであった。
道具屋の店主は、盗人から実はコンテストの優勝商品はレプリカであり、これこそが本物であると売り込まれたのだそうだ(まさかないだろうと思っていたが本当にそう言っていたとは…盗人は結構バカなのだろうか)
しかし盗人はバカでも道具屋の店主はバカではなかった。
すぐに不審に思い断ったそうだ。そして盗人が去り少ししてからノアたちがその店を訪れた。
タイミングが良かったこともあり、記憶に鮮明な不審者の情報を無事得ることが出来たらしい。
「どうやら盗人は、スラム街に住む少年のようなんだよね」
「スラム街に住む少年…」
「うん、店主も初めは心当たりがなかったそうなんだけど、オレたちと話しているうちにそういえばって。どうやらその少年はわりと有名らしくて…質屋には出禁にされているみたいなんだよね」
「……なるほど、それで質屋では情報が得られなかったのね」
どうやら盗む技術には大層長けているらしい。これはなかなか厄介かもしれない。
だがいくら希少な品物を手に入れたとはいえ、売り捌けなければ意味がないだろう。
しかも少年自身が売ろうとしていたということから、もしかすると単独での犯行なのかもしれない。
組織的犯行ではなく、純粋な単独犯罪であれば、幾分か状況はマシ…だろうか。
「そいつが売ろうとしているのには間違いないな。流石にこの街の店主たちは皆断るだろうが…」
「それに気付いて街を出て他の場所に売りに行かれると困るね」
「確かに」
3人が今後の出方に悩み唸っていると、シャーロットが口を開いた。
「あの、ではこちらからスラム街へ伺ってみるのはいかがでしょう」
「ええっ?」
可愛い顔をして豪胆な意見を口にしたシャーロットに全員がぎょっとした表情を浮かべるものの、確かに彼女の言う通りそれが最も手っ取り早く確実な方法かもしれないと思い直す。
「そうね、そうしましょう」
イザベラがそう思い同意すると、男性二人は正気か?と言いたげな視線を送ってきた。
「ええと、それは…あまりおすすめしないかなあ。やっぱり治安とか悪いしさ」
「私たちは冒険者なのよ?ある程度の戦闘能力はあると自負しているのだけれど」
「だからと言って自ら危険な場所に赴くこともないだろう」
なぜか突如結託する男性陣にイザベラが眉を吊り上げる。
しかしシャーロットの豪胆さはそれを上回っていた。
「急ぎましょう。こういったことは時間が勝負になるかと」
一番攻撃力の低い彼女にそう言われてしまっては頷くしかない。
いつだって女性は強いのだ。たとえそれがゲームの世界であっても。




