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82 質屋巡り

盗人を4人で探すということになり、二手に分かれることにした。

てっきりイザベラはノアとペアになるのかと思ったが、意外にもリアムと組むことになった。

組み分けはリアムが決めた。バランスを考えた結果、らしい。

他3人も特に希望があったわけではないので、すんなりと頷き早速分かれて聞き込みを行うこととなった。


イザベラとリアムは二人で街にある質屋を巡っていた。


「まあ、少なくともこの街の質屋に売り捌くほど盗人がバカでないと思いたいけど…」

「確かにな。何せコンテストの優勝賞品でもある。どちらかが贋作であることは必然だし、バレれば質屋だってお咎めなしというわけにもいくまい」

「それが分かってるのに、こうやって回っているっていうの?」

「質屋にはそれなりの情報網があるはずだ。どちらかといえばネックレスそのものを探すというよりは、盗人についての情報を知りたい」

「……なるほどね」


リアムの言うことは一理ある。


「そんなことより」

「……何かしら?」

「お前は一体何をしていた?全く勝手にいなくなったと思ったらまさかコンテストに出場しているなんて…」

「それは…ごめんなさい。私だってまさかあなたたちがコンテストに出ているなんて思わなかったわ。とっても仲良くなったのね!」

「はあ?俺たちの目的は話しただろう?シャーロットは賞金目当てってのもあっただろうな」

「……なるほど」


コミュニケーションを多く取らない二人なりに、利害が一致したということか。それならば納得できる…気がする。


「この事件が解決したら、きっちり説明してもらうぞ」

「分かってるわよ。私にもあなたたちのことを教えて。……本当に無事でよかった」

「……互いに、な」


どちらからともなく立ち止まり、向かい合う。

改めて見てもリアムは美しい顔をしていた。なぜかそんなことを考えてしまい、不意にイザベラの胸が高鳴る。


(…っ、こんなときに、私ったら何を考えてるのよ…)


「それにしても、よく優勝できたな」

「ああ、それは…ちょっとズルしたのよ」

「……ズル?」

「ええ、コンテストの規定になかったし、まあルール違反ではなかったと思うんだけど…」


実はコンテスト前に、イザベラは女神から貰った魅力増幅薬を服用していたのだ。

多分優勝することのできた一番の理由はそれだろう。もちろん面倒なので誰にも言うつもりはない。

確か効果は12時間。であれば今も絶賛効果が続いているはずなのだが。

そう思い至り、ちらとリアムを見上げた。

途端彼の目に動揺の色が走る。なるほど確かにドキドキしてくれてはいるようだ。さすが女神のレアアイテム。SSRも伊達ではない。

それとなく周囲に気を配ると、通行人からもかなり注目を浴びている気がする。

それはイザベラたちが先程コンテストに出場していたからだろうか、それとも薬の効果か。

どちらにせよあまり情報を探るにおいて、いい効果をもたらすようには思えなかった。

今日はもうこの辺にしておくべきだろうか。


そこまで考えてイザベラが口を開きかけたところで、背後から声を掛けられた。


「こんな人目の多いところでイチャイチャするのはいかがなものかな」

「「ノアっ」」


振り向くと、にやにやと楽しげに笑っているノアと相変わらず表情の読めないシャーロットの姿があった。

同時に名を呼んでしまい、苦々しい気持ちでリアムと視線を通わせる。


「君たちがいちゃついている間に、オレたちはしっかり情報を得ることができたよ」

「それって…!」

「ああ、盗人を見つけた」


本当に、ノアは一体何者なんだろうか。


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