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81 幻のAランク

「待て、なぜ終わったことのように話すんだ」


そのまま消えてしまいそうなイザベラに、リアムが思わずむっとした声を出す。

リアムの言葉に顔を向けたイザベラはきょとんと目を丸くした。


「……というと?」

「お前がネックレスを盗まれたのはこの街にきてからか?」

「ええ、そうだけど」

「じゃあまだ本物がこの街のどこかにあるとは思わないのか?盗んだ相手はどんなやつなんだ?」

「……少年だったわ。私と同じくらいの背丈の」

「単独か?それなら、まだ取り返すチャンスはあるんじゃないか?」

「……そう、かしら」


イザベラの言葉に先程までの勢いはない。

それほどまでにショックだったのだろう。いつも前向きで行動的な彼女にしては珍しく弱りきっていた。

そんな話をしていると、どこかに連絡を取っていたノアが戻ってきた。


「ええと、オレはこれからネックレスの行方と犯人を探そうと思ってるんだけど、君たちももしよければ協力してくれないかな?もちろん盗まれたネックレスが見つかったら、君に返すつもりだ」

「え?」


にこやかに告げられた申し出は都合が良すぎるほどいいものであったが、逆にノアのメリットが見当たらず不審ですらある。

さすがに疑いの眼差しを向けると、ノアが困惑したように頬を掻いた。


「やっぱり怪しい?うーん…実はオレ、Aランクの冒険者なんだよね。君たちも冒険者だろうから知っていると思うけど、Aランクになると国からの依頼も与えられるようになるだろう?このコンテストの賞品については元々怪しい噂があってさ、確かめるように言われてたんだ。丁度いいタイミングでイザベラに会うことができたから、参加者として紛れ込むことができたんだけど…案の定偽物だった。それを今報告したら、犯人を捕まえて来いって言われちゃってさ」


淡々と話すノアに、ノア以外の者たちの顔が驚きを浮かべた。


「……Aランクの冒険者ですって…!?」

「初めて見ました…」

「そんなことも知らずに共にいたのか」


三者三様の反応にノアが苦笑する。


「ごめんね、騙すつもりはなかったんだけど…あまり言いふらしたい情報でもなかったから、秘密にさせてもらってたんだ。まあ事情が変わったからこうして打ち明けることにしたんだけど」


ノアの話を鵜呑みにしてもいいものだろうかとイザベラは思案する。整合性は取れているものの、あまりにも話が良すぎないか?かえって疑わしい。

確かに何度か共にクエストを行った身として、ノアの実力はかなりのものであるとは認識していた。

しかしまさかAランクの冒険者だったとは…

イザベラはじっとノアを見据えていると、にこやかに微笑まれる。


(うーん…仲間と合流するという目的は果たせたし、いざとなればリアムやシャーロットだっているし…)


ちらと二人の様子を伺うと、二人と目があった。視線を交わしただけであるが、どうやら二人はイザベラの判断に委ねるみたいだ。


イザベラは決意を深めるように、息を吸ってから言葉を紡いだ。


「ノア、こちらからもお願いするわ。共に盗人を探しましょう」


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