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8 はじめてのクエスト

ギルド協会のクエスト掲示板には様々なクエストが貼ってあった。

推奨ランクも記載されているので、分かりやすい。

ここにあるクエストは全体的に低いランクのものばかりだった。小さな町だからだろうか?冒険者の数も少なそうだし。


「私はEランクだから…確か同時に最大3つまで受けられるはずよね」


どうせなら効率よくやろうと掲示板を眺めながら思案する。

(最初だから報酬は低くても簡単で場所が近くて…)


「討伐だけじゃなくて、おつかいとかもあるんだ…ん?この依頼主って…」


1枚の貼り紙が目につき、手に取る。草原でとある花を摘んで依頼主まで届けて欲しいというものだった。そして依頼主は何とエリック。報酬は正直言ってしょぼかったが、目的を間違えてはいけない。自分はエリックを攻略しなければならないのだ。であれば接点は多ければ多いほど良いに違いなかった。


「これは確定でしょ。あとはじゃあ草原の討伐系でいっか」


草原リス20匹、スライム30匹。それぞれ討伐依頼の貼り紙を手に取る。いずれもランクはE。多分大丈夫だろう。念のため後で回復薬を購入しておこうと心に留める。ただ回復薬を使用すると、この報酬では赤字である。本当にこの先冒険者としてやっていけるのか不安でしかない。


3枚の紙を持ち、カウンターへ足を運んだ。

イザベラの冒険者登録を行ってくれた女性が一人座っている。ここの受付係は彼女一人しか居ないのだろうか?

「どうぞ」と招かれたので、彼女の前に座った。


「このクエストをお願いしたいのですが…」

「はい、冒険者カードも一緒にお預かりしますね」


彼女に言われるがまま、冒険者カードとクエスト用紙を差し出す。

カードを端末に読み込み、パソコンをカタカタと叩く彼女。何とも言えないこの市役所感。

手続きが終わったらしく、カードだけをこちらへと差し出された。

受け取ったカードに目を落とすと、空欄であったクエスト欄に「進行中」の文字と共に、クエスト内容が簡潔に書かれている。

(なるほど…討伐判定も勝手にされてこの進行中がクリアに変わるのか…どうやって検知してるんだろう?)

疑問に思ったが、魔法のある世界なのでなんかいい感じに検知してくれるのだろう。


「以上で手続き完了です。クエスト達成後あるいはクエストをリタイアなされたい時は、改めて窓口までお越しください」

「分かりました、ありがとう。…イレーナ」

「!…はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」


ちらりと彼女の胸元にある名札へ目をやり、名前を口にして礼を告げると、一瞬イレーナが驚いたように目を見張ってから、優しげな微笑みを向けてくれた。

よく見ると、年が近そうだ。冒険者と違って、ギルド協会で勤務するには年齢制限がまた異なるのだろうか。

この世界の就職先がどれくらいあるのかは未知数であるが、今のところイザベラはまだ自分以外の冒険者は、両親以外と会ったことがなかった。

このギルド協会に訪れたのも二度目だが、冒険者らしき人物とは遭遇していない。

低ランクのクエスト依頼しかないことといい、もしかするとこの町は冒険者にとってはあまり魅力的ではない場所なのかもしれない。

ではなぜ両親がここに住んでいるのかは疑問ではあるが。

両親のランクは聞いたことないが、多分共にかなり上位ランクの冒険者であることは何となく察せられた。

たまに個別に依頼が来ているようで、本日父が不在であるように、両親それぞれ出掛けることもある。

かといって、今現在の両親はあまり好戦的ではなく、どちらかというと隠居済みみたいなオーラである。

冒険からほとんど足を洗った二人に対して、今まさに一人娘が冒険に出ようとしていることはどう思っているのだろう。

お祝いのパーティを開いてくれたり師を探してくれたりするくらいなので、反対はしていないだろうが…


ゲームの世界だと頭のどこかで認識してはいるものの、こうやって実際に生活を送ってみると、どうしても情が湧いてくる。


「予定通り出発出来るように頑張らなきゃ」


イザベラは気合いを入れ直すように、自身の両頬をパンと叩いてから、クエストをこなすべく、草原へと向かったのであった。


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