74 コンテスト告知
それから3日、イザベラは毎日街中を探し回りながらクエストをこなして宿代を稼ぎつつ、リアム・シャーロットそれから盗人を探し回っていた。
しかし街には日に日に人が増えてゆき、目的の人物は一人も見当たらない。
貿易都市と異なり観光地としても有名な花の都市は観光客も多いため、宿の数も桁違いなのだ。
(なんかもうこれ詰んでない…?)
はあと大きなため息をつきつつ、クエストを3つこなして協会から宿に戻る途中、見たことないほどの数の人が1箇所に集まっていることに気付いたイザベラは足を止めた。
(一体何かしら…ポスター?)
集まった人たちは皆同じように何かを見ていた。イザベラが近づくと、一つのビルの壁一面に特大のポスターが貼ってあった。
(あっ、そうかコンテスト…!)
そういえば近々世界的に有名なコンテストが開催されると聞かされていたのだった。色々忙しくてすっかり忘れていたが、一体いつ開催されるのだろう。
「二週間後か…やけに告知がギリギリ…ああああああ!」
ふと目に止まった情報にイザベラが思わず絶叫してしまうと、周囲から注目を浴びてしまった。慌てて口を塞いで場所を少しだけ移動する。しかし目はポスターに釘付けだ。
イザベラが思わず叫んでしまった理由、それはコンテストの優勝賞品であった。
(優勝賞品が神秘のネックレスって…!あれ!私のじゃない!ふざけんじゃないわよ!)
周囲の声を聞いてみると、どうやらやはりイザベラの予想通り例年はもっと早くから告知されるにもかかわらず今年がこんなに遅いのは優勝賞品がなかなか決まらなかったことが理由らしい。
今年はコンテスト10周年記念ということで、賞品賞金共に豪華なものにした結果だとか。
だとしても!盗品を優勝賞品にするなんて!一体どういう神経をしているのだか。
つまりあの盗人はこの国の偉い人の関係者ということだろうか。もしくはただ売り捌いただけか。
どちらにせよいかに正確にイザベラのアイテムを見抜いてくれたものだ。
盗人からネックレスを取り返すというミッションが格段に難しいものへとなってしまった。
これは自分のですと言って簡単に返してもらえるとは思えない。
だとするとここは正攻法でいくべきか…
再びイザベラはポスターをじっくり見る。どうやらまだ参加者募集は行っているようだ。
(私が…コンテストに参加して優勝…?)
あまり注目を浴びたくはないのだが。それにコンテストといっても一体何をするのか。
そう思いテーマを見て、イザベラは思わず肩を落とした。
(理想のカップル…!無理じゃない!一人でカップルもなにもないわよ!!!)
ここに二人が、せめてリアムがいてくれればよかったのだが。
あとはレイルか。とはいえエルフがコンテストに出るのは色々ハードルが高いだろう。
これから交流を深めていくという人に対していきなりコンテストに自分の恋人役として出場しろというのは躊躇われた。
「詰んだ…今度こそ詰んだわ…」
イザベラが呆然と佇んでいると、後ろから一人の男が現れイザベラの肩を叩いた。
「やあ、お困りのようだね」




