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73 花の都市の盗人

イザベラが目を開けるとざわめきの中に居た。


(ここは…大通りか)


女神に会う前、レイルとは別れた。彼は一度郷に戻ると言っていた。まだ子供の様子が気になるからだろう。そして落ち着いたら花の都市との交流を持ってみると言っていた。

それも彼一人でやるのではなく、適任者を何人か連れてと。彼も彼でイザベラと交流する中で、互いに助け合い人に頼ることの良さを感じるところがあったようだ。

誰かに頼ったり、任せるというのはとてもいいことだと思う。レイルは今まで強き長として郷に君臨し続けたのだろうけど、彼がその在り方を変えるということは喜ばしいように感じた。

都市と交流を持つということは今まで以上に忙しくもなるだろうし、彼の右腕になるエルフが育ってくれればいいのだが。

レイルはそのポジションをイザベラに任せたかったようであるが、さすがに今このタイミングで頷くわけにはいかない。


(何はともあれリアムとシャーロットに再会しないとね)


ゆるりと漂っていた思考の海から意識を戻した、その時だった。

どんと背中に衝撃が走り、イザベラは前につんのめる。


「っ、なに…?」


何とか踏ん張り振り返ると、そこにはイザベラと同じくらいの背丈の少年が立っていた。


「あっ、ごめんなさい!お姉さん大丈夫?」


銀色の癖っ毛に髪と同じ色の大きな瞳、鼻にはそばかすが散っていてとても愛嬌のある顔立ちである。


「ええ、大丈夫よ。あなたは?」

「僕も大丈夫だよ、ごめんね。じゃあね!」


どうやら少年は急いでいたようで、イザベラの安否を確認するとまた慌てて走って行った。

こんなにも人通りがある中であんなスピードで駆けていけるとは慣れているのだろうか。


(この街の…住人かしら?)


いつの間にか癖になっていたようで、胸元のネックレスに触れようとした指が素通りし肌に直接触れる。


「え…あれ?」


疑問に思い首元を見ると、そこにあるはずの存在が姿を消していた。


「な、ない…!どうして…!?」


はっと一つの可能性に思い当たり、再び少年の姿を目で追うと何と少年の手にはきらりと光る先程までイザベラの首元で輝いていたネックレスがあるではないか。


「まさか…盗まれた…!?」


あの瞬間にネックレスを!?と衝撃を隠せないながらも、ここで逃してしまっては今後捕まえる可能性がなくなってしまうと慌ててイザベラは少年の追いかけた。


しかしながら如何せん人が多く、さらにここには来たばかりで道も分からず少年がどこに向かって走っているのかまるで見当もつかない。


「どうしよう…ネックレスを盗まれたなんて…私…」


走る息苦しさと、大事なものを失ってしまった衝撃に耐えきれずイザベラはくらくらと目眩を覚えた。

そしてついに少年の姿を見失ってしまう。

しょんぼりしつつも、すでに日が暮れかけていた。

このまま夜通し探してもおそらく少年が今日見つかることはないだろう。

今日のところは諦めて宿を探すしかない。

仲間と合流する以外にもなんという案件を抱えてしまったものか。

イザベラは暗く落ち込む気持ちを隠しきれずにいた。


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