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72 新たなアイテム

「第4ステージクリア、おめでとうございます!」


響き渡った5度目の声にイザベラは少し安堵する。

真っ青な空がどこまでも広がっている不思議な空間、一定の間隔を開けて並んだ3つの扉。

それから、白い衣を纏った一人の女性と、長机の上の抽選機。

女神オリビアの笑顔は今日も変わらず輝いている。


「これから貴女には3つの選択肢が与えられます。1つ目はストーリーを続けること。2つ目は元の世界に帰ること。3つ目はクリアしたキャラと共にその後の人生を共に歩むこと。貴女はどの道を選びますか?」

「私は、ストーリーを続ける道を選びます」

「畏まりました。それではクリア特典のSSR確定ガチャをどうぞ1回お引き下さい」

「はい」


今回もお決まりのパターンだ。

イザベラは慣れた様子で抽選器のレバーを回すと、虹色の玉が一つ飛び出て眩い光を放つ。

光が消えた場所には美しい色の液体が入った小瓶が置かれていた。


「……また消耗品な予感」

「おめでとうございます!こちらは魅力増幅薬ですね!」

「魅力増幅薬…?」

「はい、こちらを飲むと魅力値が一定時間大幅に上昇致します。持続時間はそうですね…12時間ほどでしょうか」

「半日だけ…」

「ええ、とても希少なものなんですよ?」

「消耗品って使うタイミングが分からないんだってば!」


しかも戦闘時に使うものではなさそうである。いや魅力が上がるのであれば敵を魅了できるということだろうか。まさかこれを使って魔王を誘惑しろとか…?さすがに魔王には効果はないか。


何とも言えない表情で固まってしまったイザベラに対して、オリビアは特に気にした様子もなくにこにこと微笑んでいる。


「旅は順調のようですね」

「そうでもないわ。仲間とも逸れてしまったし…」

「そうですか。再会できるといいですね」

「ええ、そうね」


オリビアの親しげな態度に何となくイザベラも砕けた態度になってしまっていた。もしかするとこの身体に大分馴染んでしまった反動なのかもしれない。


(私こんなので大丈夫?こんなライバルお嬢様キャラなんて現代じゃ通用しないわよ?)


ここに来ると気持ちがリセットされるようだ。あんなにレイルと過ごした期間悩んで苦しんで、そして救われたような気がしていたのに、何だかそれも遠い記憶のように思えてくる。この空間は時間とも遮断されているのだろうか。


(少し踏み込んでみるか)


「ねえ、私がクリアしたことを知ってるってことは動向も知ってるってことなのよね?私エルフの亡霊から、魔王の気配がするって言われたんだけど…まさかもう魔王と会ってたりなんてことないわよね?」


イザベラの質問にオリビアはきょとんと目を丸くしてから、口元に手を添えて小首を傾げた。


「さあ…ゲームの内容に関することをお教えするわけにはいきませんので」

「そう、残念」


柔和な雰囲気であるが、やはりなかなか一筋縄ではいかないようだ。

さらりと交わされてしまった上、今後この類の質問は受け付けないことまで仄めかされてしまった。

こちらはゲームで遊ばせていただいている身である。これ以上突いてもいい結果にはならないだろうと判断し、早々に引き下がることにした。


「じゃあ、行ってくるわね」


扉に向けて歩き出したイザベラの背後から、行ってらっしゃいませという声が聞こえた。

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