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66 ボスとの戦闘 中

(やばい、強い…っ)


とはいえさすが光のレイピア。どうやら敵はアンデット系のようで、イザベラの光魔法によるダメージはかなり入っているようだ。だがそれも当たらなければ意味がない。あまりの素早い動きになかなか攻撃を当てられないでいた。

その上、エルフの少年は逃げ回りながらも容赦ない攻撃をイザベラに仕掛けてくる。

イザベラはあいにく攻撃特化系の魔道士である。防衛魔法もまともに使うことができず、まさに満身創痍であった。


(きっとここにリアムとシャーロットがいれば簡単に倒せたに違いないわ…)


改めて彼らの偉大さを知る。イザベラは彼らに比べ、やはりだいぶ劣っているのだ。自分が成長したような気がしたが、気のせいだったのかもしれない。築き上げてきた努力に対して意味がないと言われているようで、イザベラは身体だけでなく心にもダメージを負っていた。

そしてそんな心の隙を狙うかのように放たれた思い一撃の風の刃にイザベラの身体がぐらりと揺れる。

スローモーションのような出来事だった。

なんとか踏みとどまったが、続けての攻撃を防ぐ術がない。


(私…ここで死ぬ…の?)


そんなことが頭をよぎったところで、仰向けに倒れ込みそうになったイザベラの頭上を一本の矢が駆け抜けていった。風を纏ったその矢は風の刃を巻き込んで打ち消し合い、イザベラの前にぽとりと落下する。


「この矢は…!」


なんとか体勢を立て直したイザベラがはっと目を瞠り、それから背後を振り返った。

そこに立っていたのは弓を構えたレイルだった。


「待たせてすまない。……怪我をさせてしまったな」

「こちらこそ、子供たちを任せてしまってごめんなさい。助かったわ」

「……他にもいたんだ?」


突然現れた新しい人物に対して少年が警戒するように顔を顰める、も、すぐにその瞳がぱあと輝く。


「お兄さん!エルフなんだね!なんて素晴らしいみなぎる生命力!お兄さんこそボクの探し求めていた器にぴったりだ!」


歌うように告げた少年に、レイルが訝しげに眉根を寄せた。


「器?何を言っている」

「ボクはここでずっと器を探してたんだ。器さえあればボクは完全なものになれる…魔王だって倒せるようになるかも!そうすればボクが魔王だ!あははっ!お兄さんボクの器になってくれるなら、願いを叶えてあげるよ!なにがいい?世界征服?それともそのお姉さんが欲しいのかな?」

「えっ?」

「な、なにを言っている…!俺は器になどならない!それに願いは自分の手で叶えなければ意味がない!」


珍しくレイルが動揺していた。やはりレイルでもこの少年には苦戦するだろうか。二人が何とか力を合わせれば倒せそうなのだが…。イザベラが思案しつつ、少年と間合いを取るため後ろへ下がった。

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