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6 最初の攻略対象者

登録を済ませたところで、父と共に一度帰宅することになった。

どうやら母が無事冒険者となったイザベラのためにパーティの準備を行っているらしい。

真昼間からパーティかよと思わないでもないが、まあご馳走が食べられるなら大歓迎だ。

そして歩いて家に向かう途中、ふと先程のやり取りを思い出し、父に尋ねてみることにした。


「そういえば、私の職業は黒魔道士だけど…お父様は…」

「ああ、私は白魔道士だから、同じ魔法職とはいえ使用出来る魔法の種類が随分異なるね。基礎知識なら教えることも出来るが、どうせならきちんと師に教わる方がいいだろう」


父が白魔道士だったのか…となると、母がソードマスター…なんだか母を見る目が変わりそうである。


「その…魔法はどうやって覚えていくのかしら…?」


なにかスキルとか身につけるのだろうかと思い、重ねて尋ねてみた。


「そうだね…色々あるが、とりあえず帰ったら私が持っている書籍を貸すから、それを読んでいくつか練習してみなさい」

「えっ、…本…ですか」


(ちょっと待って?もしかしてこの世界の魔法ってめちゃくちゃ面倒なのでは??となると物理職はひたすら体力特訓か?だとしたらまだ魔法職の方が楽なのだろうか…でも本って!まさか呪文的なものを暗記しろってことか?)


イザベラは気が遠くなりそうであった。まさかこの歳になってもう一度勉強し直すはめになるとは…。


「……頑張るわ…」


何せ自分はいつか魔王を攻略せねばならないのである。例えそれが恋愛的な意味でだったとしても、魔王と出会うにはそれなりにゲームを進めなければならないことは何となく察せられた。

先のことを思い、つい嘆息すると、父が笑った。


「ははっ、そんなに魔法職だったのが残念だったのかい?なんなら、いっそのこと冒険者は諦めてエリックのところへお嫁に行くか?」

「……エリック?」


誰だそれは。初めて聞く名前に反応してしまう。もしかしてもしかすると…!


「なんだいその反応は。エリックといえば、お前の幼なじみの温泉宿の長男坊しか居ないだろう」


(詳細説明キタ!)

まさかの攻略キャラフラグである。てっきり冒険が始まらないと対象者が現れないのかと思っていたが、どうやら思い違いのようだ。

エリックは多分魔王ではなさそうなので、おそらく一人目の攻略者ということだろうか。

幼なじみということは、既に告白されたも同然である。

ここはさくっとクリアして、さっさと冒険に進みたい。

思わず、イザベラの瞳がキラキラと輝いた。


「そうね。それもまあ…悪くないわ」


勿論嫁に行くつもりはさらさらないが、ルートを進めるためにはとりあえず同意すべきだと咄嗟に判断する。


「おや?…噂をすれば。やあ、エリック」


父がイザベラの反応に驚いたように目を見張った。なんだ?フラグ立ってなかったのか?イザベラはエリックのこと好きじゃないの?会ってから判断すれば良かったと若干の後悔をしかけたところで、なんともタイミング良く彼が現れたらしい。

父の見ている方向へ急いで目を向けた。

すると、そこには宿屋らしき建物の前で掃き掃除を行っている一人の青年の姿があった。

背は高く茶色い髪の優しげな印象…もちろんイケメンである。

(不自然なほどのイケメン!決まりね!)

イザベラのテンションも不自然なほどに高まっていたのだが、顔色は一切変えぬまま、青年の元へ父と歩み寄った。

父に声を掛けられたエリックが顔を上げ、イザベラたちの姿を捉えると柔和に微笑む。


「おはようございます。どこかお出掛けなされてたんですか?」

「おはよう、エリック。お父様とギルド協会へ行ってたの」


口調がよく分からないが、幼なじみなのでちょっと親しげにしておく。

すると、エリックの顔色が曇ってしまった。まさか口調間違えた?もっとフランクな感じだったのだろうか。それとも丁寧口調か?すっと背筋が凍り、イザベラの顔に動揺が走る。


「そう…か。ということは、君も冒険者に?」

「ええ、そうね。そのつもり」

「この町はいつ経つんだい?」

「ええと…」


どうやら彼の様子が変わったのはイザベラの口調が違うからではないみたいだ。イザベラが町を出ることが嫌ということだろうか。

(もう私のこと好きじゃんこれ。最初から好きなパターンってどうすればいいの逆に)

好感度MAXスタートの恋愛ゲームのクリア条件ってなんだ。告白をさせればいいのか?と悩みつつも、投げかけられた質問の答えを求めて、父へ目線をやる。


「大体1ヶ月後くらいかな?」

「「1ヶ月後!!?」」


父の答えに思わずエリックと声がハモってしまった。もちろんエリックはそんなに急に?という意味で、イザベラはそんなに長くこの町に滞在するの?という意味である。


「そうだね、この子は黒魔道士で教えられる者がこの辺りに居なくてね。師を探さねばならないから、それくらいはかかるだろう」


だから別れを惜しむなら早いうちにね、と父が付け足した。そう言えばエリックを攻略するのだった。1ヶ月…その期間が長いのか短いのか、今のイザベラにはまだ分からなかった。

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