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48 危険な取引 後

「さて、一体どういうことなのか説明してもらいましょうか」


イザベラが怒りの感情を顕にして出口を塞ぐように向き合うと、アーノルドは視線を逸らして後頭部を掻いた。


「……別に、お前が見た通りだよ」

「はあ?あなた自分が何をしているのか分かってるの?あなたの夢はどうなったのよ」


この街をもっと良くしたい、そう眩しげに語っていたあの表情はとても嘘には思えなかったが。

イザベラの指摘に気まずさを覚えてか、アーノルドが不貞腐れたように唇を尖らせた。


「仕方ねーだろ。この街をよくするためにはもっと多くの金が必要だったんだよ」

「お金ですって?そのために冒険者たちを犠牲にしたっていうの?」

「っ、あれはそこまで危険な薬じゃない。精々副作用として数日間寝込むってだけだ」

「だとしても、そのせいでこの都市に来る冒険者の数が減ってるのよね?だったらあなたの語る夢からは遠ざかってるんじゃないの?」


イザベラが畳み掛けるように言うと、アーノルドは顔を歪ませた。


「そんなこと分かってる!俺だって…本当はこんなことやりたくなかった。でも、今のままじゃダメなんだ。親父たちに任せてたら、いつまで経ってもこの街は良くならねえ」

「アーノルド…」


どうやら彼は彼なりにこの都市を思っての行動だったようだ。方法としては到底悪手としか思えないのだが。

きっと様々な要因がここまで彼を追い詰めてしまったのだろう。

はあとイザベラが嘆息して額を抱えた。


「なんだ?お前も俺をバカにするのか?どうせ俺は夢見がちなぼんくらだよ」

「もう…勝手に決めつけないでよ。あなたは周囲から自分がぼんくらだの道楽息子だのって決め付けられてると思ってるかもしれないけど、私からしてみれば、あなただって人のことを十分決め付けてるわよ」


勝手にヒートアップする様子にイザベラが呆れていると、アーノルドの顔に悲痛の色が浮かぶ。

流石に言いすぎたかとイザベラが口を開きかけたそのとき、背後から人の気配がした。


「イザベラ?そこにいるのか?」


はっとイザベラが振り返ると、そこにはリアムとシャーロットの姿があった。

きっとなかなか宿屋に戻ってこないイザベラを心配して探しにきてくれたのだろう。

さて、今起きたことを彼らにどう説明したものか。

アーノルドの話だってまだまともに聞けていないのだ。ここで彼を捕らえても何の解決にもならないだろう。

あの売人たちの正体についてもまだ聞いていない。そこだけははっきりとさせておきたい。

そう思い、再びアーノルドの方へと顔を向けたイザベラであったが、彼女の注意がリアムたちに向けられている間にアーノルドは姿を消しており、そこには誰の姿もなかった。


「ちょっと…嘘でしょ…」


イザベラは思わず膝をつきそうになった。これで何もかもが振り出しに戻ってしまったのだ。

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