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41 いざ勝負!

気になってアーノルドの後をついてきてしまったイザベラであったが、正直どんな言葉を掛けるべきかまではまだ思いついていなかった。


(不可抗力とはいえ、悪口まで聞いちゃったしなあ…)


タイミングとしてはあまりよろしくない。もしかするとアーノルドは先程自分の悪口を言われていたこと、それをイザベラが聞いていたことにも気が付いているかもしれないのだ。

であれば、さらに条件としては最悪だった。


(うーん…でもこのままだと彼とのフラグを立てるチャンスが…)


悩みながら歩いていたイザベラは、自分が一体どこを歩いているのか把握していなかった。

そしてアーノルドが足を止めたときには、彼女もまた人気のないところにまで足を運んでいたのだ。


(こんなところに一体何の用事が…?)


我に返ったイザベラが周囲を見渡していると、アーノルドがイザベラの方を振り返った。


「俺に一体何の用だ?熱烈なストーカーさん」

(しまったバレてたのか…!)


イザベラは気まずさを覚えつつ、アーノルドの前に姿を表した。アーノルドは口元を緩めてこちらを見ており、気分を害している様子はなくどちらかと言えば楽しんでいるようにすら見える。


「黙って後をつけるようなことをしてしまって、ごめんなさい」


ここは素直に謝るべきだと判断し、何か言われる前にイザベラが言葉を紡いだ。


「別に構いやしないさ。それで本当は何の用だったんだ?まさか俺に惚れたとか?」

「そういうわけではないけど…」


ここで頷くのはあまりにも不自然である。イザベラは曖昧に否定することにした。


「だったら不必要に俺に近付くべきじゃないな。俺がこの街の嫌われ者だってことは知ってんだろ?」


ギクリとイザベラの身体が強ばった。やはり全部バレていたらしい。

折角なので理由を本人に聞いてやるかと白々しくイザベラは言葉を返す。


「あら、そうなの?どうしてかしら。貴方がこの街の女性を独り占めしているから?」

「ははっ!野郎からの嫉妬は見苦しいよなあ。まあそれもないわけじゃないだろうが…。一番の理由は、俺が無能な道楽息子だからさ」

「無能…ねえ?」


イザベラの片眉が釣り上がる。本人の耳にまでそんな噂が届いているとは、住人たちもなかなか遠慮がない。


「どうした?俺を慰めてやろうってか?」

「…慰めるというか、事実なのか疑いを持っているといった方が正しいわね」

「ふうん?お前には俺がどう見える?」

「少なくとも、無能には見えないわね。貴方は私が商売を始める前から、上手くいかないと言い当てたわ」

「それは別に…お前の商売が上手くいかなければ、俺のハレムに入ってくれるかもしれないだろう?単なる俺の願望かもしれないじゃないか」

「そうかしら?それにしては随分遠回りな手段を用いるのね」

「結果論だが、今からでも俺のハレムに入れてやってもいいんだぜ?」

「残念だけれど、私これから商売で忙しくなるつもりなのよ」


イザベラのつんと澄ました表情に対して、アーノルドか愉快げに唇を歪ませる。


「閑古鳥が鳴いているのに?」

「ここからあの店は繁盛するの。賭けてもいいわ」

「へえ…何をお望みだ?」

「私が勝ったら、貴方の夢を教えて」

「夢、だって?ははっ!面白いな、いいぜ。じゃああの店が繁盛しなければお前は俺のハレムの一員になってもらおうか。期間は…そうだな、一週間」

「いいわよ」


あっさり即答したイザベラにアーノルドが目を丸くした。そして悠然と笑いかける。


「楽しみにしてるぜ、イザベラ」

「こちらこそ」


アーノルド自身の話を聞き出すにはこうするしかないだろう。内心苦しい勝負になることは予想出来たが、イザベラは平静を装い彼と向き合っていた。


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