35 貿易都市で荒稼ぎ?
「す、凄い…」
「お金の匂いがします」
「…美味いものが食いたいな」
貿易都市に着いた3人は街に足を踏み入れた途端圧倒されてしまった。
貿易都市は都市と呼ぶには些か発展が遅れているようだったが、所狭しと並んだ屋台は活気があり、人通りも王都と比べても遜色なかった。
全体的な賑わいだけで言えば王都よりも上かもしれない。
「どこに行くべきか悩むわね…」
「そうですね、宿屋に泊まるお金はあるんですか?」
「……あ」
「私、もう野宿は嫌です」
「そうよね…」
(やばっ、すっかり忘れてた…)
お金は全くないということはないが、3人分の宿泊費用は正直痛い。それにこの都市の滞在期間もまだ決まってないのだ。なるべく早くお金の工面が必要だった。
(そうだ、丁度いいやつが居るじゃない)
イザベラが良からぬことを考えながらリアムに目を向けると、何かを察したらしいリアムが頬を引き攣せてイザベラを見た。
「お前、まさか…」
「リアム、貴方はクエストを受けて全員の宿代を稼いできて頂戴」
「何で俺だけ…」
「私たちにはやるべきことが他にあるのよ。か弱い女の子たちをこれ以上野宿させるつもり?」
「お前たちの一体どこがか弱いんだ」
「いいから!それに貴方はとーっても強いんだから、一人でも十分でしょう?まあ自信がないって言うなら、シャーロットを連れてってもいいけど…」
「いらない、俺一人で十分だ」
「ありがとう助かるわ!よろしくね!シャーロット、私たちも行きましょう」
「はい、リアムさんよろしくお願いします」
「……くそ…」
「夕方になったら一旦ギルド協会で待ち合わせしましょう。期待してるわよ、リアム」
あっさりとイザベラの挑発に乗ってしまい悔しがるリアムを置いて、イザベラはシャーロットと歩き出した。
「私たちのやるべきことってなんですか?」
「ふふ、そんなの決まってるじゃない。この街に来た目的を忘れたの?」
情報収集には男連れよりも可愛い女二人の方が都合がいいのだ。
「まあでもいきなり魔王について教えてくださいなんて言えば怪しまれるに決まってるから、まずは信頼を得るところから始めましょう」
「…というと?」
「シャーロット、貴女お金を稼ぎたいって言ってたわよね?」
にこりとイザベラは美しい笑みをシャーロットへ向けた。
こうしてイザベラたちは屋台通りをひやかしつつ、情報を集めることとなった。
早速果物売りに声を掛けられ、イザベラはにこやかに応じる。
「やあ、お嬢ちゃんたち可愛いね。ここでしか買えないフルーツがあるんだけど、どうかな?」
「あら、いいわね。ところでお兄さん、ちょっといいかしら?」
「なんだい?」
「私たちもここで商売をしてみたいのだけれど、どうすればお店を開けるのかしら?」
「へえ?お嬢ちゃん面白いことを考えるね。ここで店を開くには、地主の許可が必要だな」
「地主にはどうすれば会えるの?」
「この通りを真っ直ぐ進んだ先に、どデカい城みたいな屋敷が立ってる。そこに行けば運が良けりゃ会って貰えると思うぜ」
「そうなのね!ありがとう。あ、フルーツ頂くわね」
「毎度あり!それにしても何の商売をするつもりだ?」
「ふふ、楽しみにしてて。行きましょうシャーロット」
「はい、イザベラさん」
(さあて、たんまりと稼がせてもらうわよ!)
イザベラは今にも高笑いをしそうな表情であった。




