33 ガチャのお時間です
「第2ステージクリア、おめでとうございます!」
真っ青な空がどこまでも広がっている不思議な空間に、一定の間隔を開けて並んだ3つの扉。
それから、白い衣を纏った一人の女性。
3度目ともなると、特に感慨はない。
イザベラは横たわっていた身体を起こして、女神の方に歩み寄った。
「これから貴女には3つの選択肢が与えられます。1つ目はストーリーを続けること。2つ目は元の世界に帰ること。3つ目はクリアしたキャラと共にその後の人生を共に歩むこと。貴女はどの道を選びますか?」
女神がお決まりのセリフを続ける。
イザベラの気持ちは既に決まっていた。
「私は、ストーリーを続ける道を選びます」
「畏まりました。それではクリア特典のSSR確定ガチャをどうぞ1回お引き下さい」
「はい…」
(前回は確か人魚のウロコだったな)
これというピンチもなかったため、まだ使用していない。
(消耗品以外がいいなあ…)
イザベラはそう思いながら、長机に乗った抽選機の前に立ち、矢印の方向へレバーを回す。
すると、今度も虹色の玉が一つ飛び出てきた。
(えっ?またウロコ?それともそういう演出?)
眩い光に目を眇めつつも薄目で伺っていると、光が消えた場所には玉でもウロコでもない細い剣が横たわっていた。
「剣…?黒魔道士なのに…?ハズレ?」
あからさまにガッカリするイザベラに対し、女神はにこやかに微笑んだままである。
「おめでとうございます!こちらは光のレイピアですね」
「光のレイピア?」
「ええ、この武器は魔法五属性の頂点に位置するものです。魔法職であれば、光魔法を纏った物理攻撃も可能になります。通常の魔法攻撃でも光魔法の効果が倍増します。闇属性に対してであれば、ダメージ量が5倍ほど増加します」
「え、それって…めちゃくちゃ強いのでは?」
「はい、めちゃくちゃ強いですね」
「急にチート…?」
「チート…とは?」
きょとんと首を傾げる女神。
一方イザベラは、突如訪れた幸運に震えていた。
出来れば最初のガチャで手に入れたかったが、まだ十分序盤だろう。ここで最終武器のようなものを手に入れられたのは相当ありがたい。
さらに効果が倍増ということは、イザベラ自身の能力が上がることで、今後さらに武器も強化されていくということだ。
これなら、Bランクの剣士やCランクのヒーラーに対しても、そこまで劣等感を覚えなくて済むかもしれない。
(メイン攻撃役として少しは貢献しなければ…!)
その上、魔法職でも物理攻撃が可能というのはたいへんありがたかった。
今のイザベラでは、敵に近付かれてしまったり、魔力が枯渇してしまうと文字通り手も足も出なかったのだ。
どうせこの世界は甘くないので、剣も修行しなければ使い物にならないだろうが、これからはリアムがいる。彼は有能な剣士だ。師匠がすぐそばに居るなんてなんと幸運が重なったものだろう。
イザベラはようやく向いてきた運に、叫びたい気持ちでいっぱいだった。




