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24 はじめてのおつかい

「配達に行ってきて。酒場まで」

「酒場…」


本日はローザから出来たばかりの魔法薬を配達するように言われた。


(酒場か…王都に来てから一度も行ったことないな。というか、待てよ。酒場といえば、仲間の見つかる場所じゃない?)


恋愛ゲームとは異なるが、酒場で仲間を探すRPGをプレイした記憶がある。


(そう、酒場!どうして今まで気が付かなかったんだろう!仲間をさっさと見つけてからロビンにアプローチしてもいいわよね!)


イザベラが仲間を見つけたと知れば、ロビンもイザベラのことを高望みするめんどくさい女と思うこともないだろう。

イザベラは天才的な閃きに顔を輝かせた。すると、ローザにじろりと睨まれる。


「まさか一杯飲んでこようなんて考えてないでしょうね?」

「か、考えてません!」


あらぬ誤解を受けそうになり、慌てて否定するイザベラであった。



「ここが酒場か…結構大きいわね。というかまだ夕方なのに随分賑わってるなあ…」


以前王都マップで見た酒場にやって来たイザベラ。手には魔法薬の入ったカゴを持っていた。

入口の扉は、ウエスタンドアだ。いかにもBARという感じがして、自然と気分が高揚してしまう。

木製の扉を押して店内に入り、まずは配達を済ませるべく、従業員を探すことにした。

今日のメインは配達である。そのため今は酒場の雰囲気を知るだけに留めて、仲間を探しにはまた後日改めて来ようと思っていた。


(人が多すぎて、どの人が店員なのかいまいち分からない…それっぽい人はいるけど皆忙しそうだし…)


グラスやら皿やらを持って忙しなく動くホールスタッフらしき人に話し掛けるのはなかなかの難易度である。

困惑気味にタイミングを見計らっていると、不意に肩を叩かれた。


「ねえ、君。一人で来たの?慣れてない感じだけど、今日が初めて?」

「えっ…」


イザベラに声を掛けてきたのは酒場の客のようだ。年はイザベラより少し上だろうか、既に酒を飲んでいるようで顔が赤く心なしか目も据わっている。


(やば、さっさとあしらわなきゃ)


本能的な危機を察知したイザベラは、曖昧に微笑みながらさり気なく後ずさったが、壁を背にしていたため、逃げ場を失う形となってしまった。


「俺はここの常連だからさ、ここでの作法とか色々教えてあげるよ?」

「い、いえ…結構ですわ」

「まあ、そう言わずにさあ」

「っ、やめ…」


男に腕を取られ、ぞっと鳥肌が立った。すぐにでも腕を振り払わなければと思ったが、それ以上の恐怖に身が竦む。

(もうダメだ蹴り飛ばすしかない…!)

酒臭い顔を寄せられ、イザベラの反応を愉しむように笑う男に、恐怖以上の怒りが湧き上がったイザベラが蹴りを入れようと重点を低くしたそのとき、イザベラと男の間に割り入るように現れた黒髪がイザベラの視界を覆った。


「おい、嫌がってるじゃないか」


風のように現れた影がイザベラの手を掴んでいた男の腕を掴み押さえつけて、もう片方の手で男の顔を殴り付ける。

あまりに突然のことだったため、殴られた男は受け身を取る間もなく吹き飛ばされて、別の客たちのテーブルにぶつかり崩れ落ちた。

皿やグラスの割れる音が店内に響き、場が一気に騒然とする。


「…ってえな、何しやがる…!」

「な、なんだ?喧嘩か?」

「おお、やっちまえー!」

「おいおい勘弁してくれよ」


様々な声が飛び交い、視線がこちらに集中した。

呆然と立っていたイザベラであったが、殴られた男と殴り飛ばした男の喧嘩が今にも勃発しそうな雰囲気に我に返ると、慌てて酒場の店員らしき人物に、魔法商店ですと魔法薬の入ったカゴを押しつけ、助けに入ってくれた男の腕を引っ張った。


イザベラを助けてくれた男は無表情で殴り飛ばした男を見下ろしていたが、イザベラに腕を引っ張られたことで彼女の方を振り向いた。


「なんだ?」

「なんだじゃないわよ!いいから来て!」


(今すぐここから逃げなきゃ!ローザにバレたら殺される!)


真っ青になったイザベラは、強引に男の手を引いて酒場を飛び出し、逃走を図ることにした。

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