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本を借りようと図書室の外に出たところで、イザベラはビルと出くわした。

げっと思う気持ち通りの表情を浮かべたのだが、ビルはにこやかに話しかけてきた。なかなかのメンタルの強さである。


「やあ、イザベラちゃん。今日も本を借りに来たの?」

「ええ、そうよ」

「今日は何の本?なんか難しそうだねー料理はもうやめたんだ?」

「そうね、料理の本はもうひと通り借りてしまったから…」

「イザベラちゃんの手料理食べたいなー」

「機会があればね」

「ほんと?やったあ!いつにする?」

「ちょっ…」


あまりの押しの強さに、もはやドン引きである。あしらい方の練習台になるかと思ったが、このままだと押し負けてしまいそうだ。仕方がないのでイザベラは最終手段に出ることにした。


「あの、今日はこの後予定があって急いでるの」

「そうなんだ?邪魔しちゃってごめんね。…あ、そうだ。イザベラちゃん仲間を探してるんだって?」

「ええ、まあ…」

「俺も協力するから、気軽に相談しに来てよ!イザベラちゃんのためなら頑張っちゃう」

「ありがとう、助かるわ」


にこりと笑顔を作ってビルに向ける。そして会話を終わらせるべくさっさとカウンターに足を運んだ。

カウンターでは丁度ロビンのところが空いたため、すかさず彼の元へと向かい腰を下ろす。

カウンターに目を向けた際、ロビンの視線を感じたような気がしたのだが、彼の方を見てもこちらを見ていた素振りはなかった。気のせいだろうか。


「どうぞ」

「こんにちはロビンさん。貸出手続きをお願いします」

「ああ、…お待たせしました」


いつになく冷たい対応のロビン。視線すら合わず、取り付く島もなかったため、今日の雑談は諦めることにした。


「ありがとう。それでは良い一日を」

「……またのお越しをお待ちしております」


(私なにかまずいことしたかな?…もしかして)


思い当たることはあった。ロビンの紹介を断りまくっている件である。ギルド協会の業務として、仲間の紹介業務がどの位置なのかいまいち把握していなかったが、ビルまで仲間を紹介すると言ってくれたくらいなのだ、イザベラが仲間選びにうるさいみたいな噂がギルド協会内で出回っているのかもしれない。


(めんどくせえ女、なるべく関わらないでおこう、みたいな…?ま、まずいな…)


若干忘れかけていたというか、アピールしあぐねているというか、好感度を上げる努力を怠っている自覚はあった。けれど、好感度が下がっていくのは非常にまずい。

せっかく仲間を見つけたとしても、ロビンが攻略出来るまでもしかしたら王都を出られないかもしれないのだ。


(魔法薬でお金稼ぎも大事だけど、これは恋愛ゲームだもんね。もっと恋愛イベントを起こさないと!……いっそ恋愛の本でも借りちゃう?)


考えることの多さに気が遠くなりそうだ。

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