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20 私が脳筋…?

料理の本を借りた日の翌朝、早速本に書かれていた通りまずは紅茶の淹れ方を工夫してみることにした。

そわそわとはやる気持ちを抑えつつ、ローザの様子を伺う。

すると、紅茶を口にしたローザが、あらと言わんばかりに目を瞬いてイザベラを見た。


「どうでしょうか?」

「及第点ね」

「良かった…」


やはりローザはただ求める水準が高いだけであり、正当な評価は行なってくれているようだ。二重の意味でイザベラは安堵した。


「今日も薬草の採取を行えばいいのでしょうか?」

「そうね…今日は最短時間で帰ってきなさい」

「?…分かりました」


何か帰ってきてからも用事があるのだろうか。ギルド協会に寄れないのは残念だが、ローザからの指導を優先したい。

そう思ったイザベラは三日目ということもあり、最も早いと思われる時間で薬草を採取し帰宅した…のだが


「遅い」

「……申し訳ありません」

「時間掛かりすぎでしょ」

「その…モンスターを倒すのに手間取ってしまい…」


薬草採取だけなら良いのだが、フィールドにはモンスターも出現するのだ。

極力戦闘は避けるようにしているものの、どうしてもある程度は討伐しなければならなかった。


「アンタ、もしかして途中で魔力切れを起こしてるんじゃないでしょうね?」

「えっ、…はい…」

「それで回復薬を節約して休み休み戦ってるってわけ?」

「……ご指摘の通りです」

「はあ、呆れた…」


ローザは嘆息し、イザベラを冷ややかな目で見つめる。

「アンタ、母親にそっくりね。どうせ最大火力の範囲魔法で全体攻撃でもしてるんでしょう?そんな脳筋な戦い方してたら、回復薬がいくらあっても足りないに決まってるじゃない」

「…うっ…」


母親のことは脳筋だと思っていたが、まさか自分までそんな評価を受けるとは。しかもローザの指摘は的確であり、ぐうの音も出なかった。


「アンタに必要なのは、コントロール。もっと頭を使って戦いなさい。今後範囲攻撃は禁止。バカみたいに真正面から突っ込んでくんじゃなくて、自分の立ち位置を常に考えながら相手のウィークポイントを狙うの。分かる?」

「はい…ご指導ありがとうございます」

「じゃあ、夕飯の支度よろしく」


相変わらず言いたいことだけを言ってローザはどこかへ行ってしまう。

だが、ローザの指摘はとてもありがたいものだった。イザベラの現状を分析して足りない部分を指導してくれる。まさに師と弟子のあるべき姿ではないか!

やはりこういった客観的な視点は本から学ぶのは難しい。


「それにしても、弱点か…」


魔法の属性による相性であれば、初めてモンスターを討伐した時からちまちまとメモを続けていた。

しかし、ローザの言う弱点はそういったニュアンスではなかった。おそらく、モンスターには部位としてそれぞれウィークポイントが存在するのだろう。


「うーん…そんなの全く意識してこなかった…」


ローザの言う通り、イザベラの戦闘方法はとりあえず様々な種類の魔法を極力広い範囲でぶっ放すというもので、それにより何となく魔法が効いてそうな属性をメモするくらいだったのだ。


「敵の部位や自分の立ち位置まで考えながら戦わなきゃならないの…?」


正直げんなりしないでもないが、魔王を倒すためにはこういった努力も欠かせないのだろう。


「はあ…また本借りに行くか」


誰にも見られていないのを良いことに、大きな溜息をひとつ零してから、イザベラは夕飯の支度に取り掛かることにした。

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