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2 恋愛ゲームはじめました

「……ここ、は…?」


真っ白な光に包まれたかと思うと、どうやら気を失ってしまっていたらしい。

次に彼女が目を覚ましたのは、真っ青な空がどこまでも広がっている不思議な空間だった。


「ここ、ウユニ…いや。まさか…ね」


薄く水の張った白い砂浜は青空を反射しており、上下が空に繋がっているようで実に神秘的な光景だ。

彼女自身は行ったことはないが、記憶としてある某観光地にとてもよく似ている。


それにしてもここは夢の中なのだろうか。

砂浜に倒れており、現在は座り込んでいるというのに、砂も水も身体に付着していない。

手で触れれば確かに水や砂の感触はするのだが、手を持ち上げてそれらが零れ落ちてしまうと手のひらは既に乾いていた。


「変な夢…」


身体を起こして立ち上がり、きょろきょろと周囲を見渡してみる。

すると再び眩い光が彼女を包んだ。あまりの眩しさに咄嗟に腕で顔を覆う。


「うふふ、ようこそ。新たに誕生せしプレイヤーよ」

「……え?」


光が消えてゆき、腕を解くとクリアになった視界の中に、一人の白い衣を纏った女性が立っていた。

彼女の背後には、3つの扉が一定の間隔を開けて並んでいる。


「……誰?」

「私は、このゲームの案内人。女神オリビアです」

「あっ、自分で女神って名乗る感じなんですね」

「?…女神ですから。あなたは光栄にも此度プレイヤーに選出ました。おめでとうございます。早速ですが何か質問はありますか?」


よくできた夢だなあと思いながら、しばらくは自称女神との対話を試みることにした。


「はい。私は一体何のプレイヤーに選ばれたんでしょうか?」

「恋愛シミュレーションゲームです!」

「……もしかして、あの…幻の…?」

「幻かどうかは分かりませんが、プレイヤーとして選ばれることはかなり稀有だと言っていいかもしれませんね」

「クリアしないと出られないんですか?」

「そうですね…。このゲームの最終目的は、この世界の魔王を攻略して頂くことなのですが」

「恋愛的な意味で?」

「恋愛的な意味で。でも、魔王に辿り着くまでにはさまざまな攻略キャラが存在します。その攻略キャラをクリアすると、元の世界に帰ることはできますよ」

「え?最後までクリアしなくていいんですか?」

「私としてはして頂きたいのですが…見込みのない方に頑張って頂くよりも、新たに別のプレイヤーをお呼びした方が早いでしょう?」

「まあ…そうですね」


であるならば、案外すんなりと帰れそうだ。


「私以外にもプレイヤーは存在するんですか?」

「現在同時進行という意味では存在しません。ですが過去にはもちろん居ました。彼女たちは元の世界に帰ったり、ゲーム内で攻略キャラと共にストーリーから離脱することを選ばれました」

「元の世界に帰る以外にも選択肢があるってことですか?」

「ええ。攻略キャラをクリアした際、3つの選択肢が与えられます。1つ目はストーリーを続けること。2つ目は元の世界に帰ること。3つ目はクリアしたキャラと共にその後の人生を共に歩むこと」

「……なるほど…」


まあ確かに恋愛ゲームというくらいだし、攻略したキャラにうっかり本気で惚れてしまい次に進みたくないという状況になる気持ちも分からなくはない。

(わりと優しい設定だな。さすがは私の夢。)


「それで、どうでしょう?あなたは参加する意思はありますか?」

「えっと、じゃあ最後に一つ。途中で死ぬ可能性はありますか?」


魔王というからには戦闘要素も多分あるのだろう。例え夢と分かっていてもこのリアルな感じで死ぬのは御免である。


「死という概念はあります。もしあなたがゲーム内で死んだ場合、セーブポイントに戻るかもしくはこの空間に戻ってきます。この空間に戻ってきた場合、最後にクリアした時点でのポイントまで遡ることになります。ただ、攻略キャラを選びメインストーリーから離脱した後に死んだ場合は…現実世界と同じ死を迎えるに等しいことになりますね」

「セーブができるんですか」

「はい。セーブ!と唱えるといつでもどこでもセーブ出来ますよ」

「え…」

(なんかちょっとそれ恥ずかしいな。他の人には聞こえない設定になってればいいけど)


「分かりました。やります、このゲーム」

「よかった。では、一番左の扉をお進みください」


まだ色々と疑問は残っていたが、せっかくの夢なのだからさっさと本編を楽しみたいという気持ちと、もしかして本当にあの幻のゲームなのでは?という好奇心に負けてしまった。


とりあえず進めるところまで進んでみよう、と軽い気持ちで、彼女は女神に促されるまま、左の扉を開き奥へと進んだのであった。

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