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152 第一試合1

イザベラが悩んでいる間も無情に時は過ぎてゆく。

気付いた時には朝になっていた。

余程酷い顔をしていたらしく、シャーロットから心配されながらもリアムとノアに合流した。

皆で朝食を摂ったが、イザベラに食欲はなかった。


「……イザベラ?昨夜何かあったのか?」


イザベラの異変に気付いたらしいリアムが隣の席から声を掛けてきた。

イザベラは迷いつつも望みを口にしてみることにした。


「あのね、今日の大会なんだけど…やっぱり出るのやめにしない?」

「……今更何を言い出すかと思えば…」

「だってそんな…自ら危険な目に遭うことなんてないと思うのよ」

「オレは出るよ」

「ノア!!?」


てっきり説得を要するのはリアムだけだと思っていたのだが、ここにきてノアが真摯な表情でそう告げ驚いてそちらを見た。


「なに?」

「だってあなた…そんな乗り気じゃなかったでしょ?」

「状況が変わったんだ。オレはこの大会で優勝したい。まあオレの代わりにリアムが優勝してもいいんだけど…最初から人任せってのもどうかと思うしね」

「なんで、そんな突然…」

「そういうことだから。そろそろ出場者は集合する時間じゃないか?行こう、リアム」

「ああ」

「ちょっと待ってよ…!」

「元はと言えばオレに参加しろと言ったのは君だろう?今更それを反故にしたいなんて、都合が良すぎるんじゃないかな」

「それは…そうだけど…」

「じゃあ、また。オレたちの応援よろしく!」


イザベラが言い淀んでいる間にも、ノアは颯爽とリアムを連れて去っていった。

イザベラとしては呼び止めたかったが、ノアの言葉は正論すぎて言い返す理由がない。

眉間に皺を寄せ、去っていった背中をいつまでも恨めしげに見ていると、斜向かいに座っていたシャーロットが声を掛けてきた。


「やはり何かあったんですね」

「私もだけど…あなたたちも何かあったの?ノアの態度が豹変した理由って分かる?」

「ハッキリとした理由は分かりませんが…、彼が急にやる気になったきっかけなら分かります」


シャーロットが言うには、ノアはこの大会での優勝商品を耳にした途端、絶対に優勝すると言い出したのだそうだ。


「優勝商品?一体なんだったの?」

「滅びの都市の最後の王の物とされる冠です」

「滅びの都市…」


滅びの都市とは、イザベラたちの一応最終目的地でもある魔王の住処があると言われている都市である。

魔王がそこに住み着いたせいで人間は皆滅んでしまい、今そこにあるのは魔王の城とモンスターだけだと以前読んだ本に書かれていた。

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