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150 闘技大会前夜3

「そう、か…」

「ど、どうしたの?私なにか変なこと言ったかしら?」

「いや、君は全く何もおかしなことはない。ただ…正直言ってこの大会に出場することはあまりお勧めできない。もし目的がそれであれば今すぐ棄権した方がいいだろう」

「どうして?」

「……君ももう知っているかもしれないが、この大会は非常に危険なものだ。死人が出ることもあるし、死なないにしても大怪我を負うことだってある。戦闘中治療は行われない。だから有能な白魔道士がいたとしても手遅れになる可能性は十分にある。…それに…あまり言いたくないが、この勝敗は裏で賭け事にも使われている。そしてそれをスポンサー側は黙認している。これがどういうことか分かるか?」

「……試合以外の場所で何か妨害される可能性があるってことかしら?」

「その通りだ。君たちが弱いとは思えない。だが、そこまで危険を冒す必要はあるだろうか?もう一度考え直してほしい」

「あなたはそれでも出場するのよね?」

「ああ。オレは…この大会に出場する目的があるんだ。今回も優勝を狙っている。もしかするとこれがオレの最後の試合になるかもしれない」

「そう…なの」


イザベラの瞳が困惑で揺れる。イアンはどこまで本当のことを話してくれているのだろうか、イザベラからすると嘘を言っているようには思えない。だがイアンはライバルでもある。だとすればこれこそが彼の策略という可能性もあるだろう。

イザベラの困惑を感じ取ったらしいイアンがふと顔を綻ばせた。


「困らせてしまい申し訳ない。この大会はグループ戦と個人戦に分かれていて、最初はグループ戦だ。さすがにそこまでの間に何かされるとは考えにくい。それくらいならば出てみても構わないんじゃないだろうか」

「そうね、そうなるかもしれないわ。…彼らは言い出すと止められないところがあるから…」

「っはは!君も苦労するな。実はオレと一緒に居たマチルダは今回初めての出場なんだ。本当は彼女にも出てほしくなかったんだが…アイツもオレの言うことを聞かなくてな」


困ったものだと快活に笑うイアンにつられるようにイザベラも微笑んだ。

やはりどう考えてもイアンは悪い人間には見えない。彼の出場理由は何なのだろう、いつか聞かせてもらえる日はくるだろうか。優勝した際にでも聞いてみれば答えてくれるかもしれない。


どちらからともなく微笑み合い見つめ合っていた二人であったが、ふとイアンが真顔になり言葉を紡いだ。


「それにしても君は随分と美しいな。一緒に居た…リアム?彼は君の恋人か?」

「えっ!!?」


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