15 旅立ちの日
今日はイザベラが王都へ旅立つ日である。
あの日ガチャで手に入れた人魚のウロコは、朝目が覚めると手に持ったままであった。
レアアイテムということなので極力バレないようにしようと、誰にも見つからないように大事にしまい、もちろん今日も身に付けている。
エリックからは告白されて以降、返事を急かされることもなく、王都行きを止められることもなく、まるで告白自体がなかったかのように自然に接してくれていた。
だが、時折彼がイザベラを見つめる瞳は、とても愛しげで柔らかく、思わず何度かときめいてしまったのも事実である。
(所詮恋愛ゲームって思ってたけど…なんだか思ってたのと随分違うな…)
エリックから愛情の込められた視線を送られるたびに、くすぐったいような照れくさいような嬉しいような、複雑な想いがイザベラの胸中を渦巻いた。
そして告白の夜以降、出発の今日に至るまで、毎晩なぜかイレーナと飲みに行くことになった。
イレーナはイザベラと飲みに行くことに味をしめたのか(?)2回目以降は彼女の方からイザベラを誘ってくるようになったのだ。
イザベラとしても断る理由はなかったので、結果として毎晩別れを惜しむイレーナを慰めるはめになってしまった。
おかげで、イザベラと一緒にご飯を食べる回数が減ってしまった!と嘆く両親を宥めるはめにもなった。
(この世界の住人たちは愛情深いのかしら…)
思わずひっそりと苦笑を浮かべてしまうイザベラであった。
現在、旅立ちの準備を済ませて町の外れへとやってきたイザベラ。
見送りに来てくれたのは、両親、エリック、そしてイレーナ。
案の定エリック以外は大号泣である。エリックとイザベラは顔を見合わせて苦笑し合う。
「随分愛されているんだね、イザベラ」
「そう…みたいね。ありがたいことだわ」
「もちろん僕も君のことを愛してるよ」
「……!…エリック…っ」
エリックはイザベラに告白して以降、吹っ切れたのか開き直ったのか不明であるが、こうしたように堂々と好意を示してくるようになった。
嬉しくないと言えば嘘になるが、人目がある前でもやられると流石に恥ずかしい。
イザベラの顔にさっと朱が走り、諌めるように睨みつけた。赤い顔で睨み付けても効果が半減してしまうことは経験済みだったが、仕方がない。分かっていても意思表示をすることが重要なのだ。
堂々としたイチャつき(に見えなくもない)やり取りを、泣いていたはずの3人が囃し立てたため、ますますイザベラの顔は赤く染ったのであった。
「それじゃあ、行ってくるわね」
「気をつけてね」
「行ってらっしゃいませ、イザベラさん。帰りをお待ちしております」
「王都に住むお前の師範となる方にはもう連絡は入れてあるからね」
「行ってらっしゃい、イザベラ。君に相応しい男になれるよう僕はこれからも精進するよ。お互い頑張ろう」
「みんな、ありがとう。みんなの期待に応えられるよう精一杯頑張るわ!」
大好きな4人に見送られ、イザベラは満面の笑みで手を振り、意気揚々と王都を目指して出発したのだった。




