144 調査に向かおう
その後、出場者のために用意されている個室へと四人集まり改めて話し合う場を設けることとなった。
真っ先に口を開いたのはノアである。
「ねえ、ちょっと。どういうこと?何でオレが出場しなきゃならなくなったわけ?」
「だって…暴走したリアムを止められるのはあなたしかいないじゃない」
「俺は暴走などしていない」
「勝手に出るって決めたじゃない!」
「手続きの手間が省けてよかったじゃないか」
「いいわけないでしょ!?あんな怪しい人の話に乗るなんてどうかしてるわ!」
「たとえあの男がなにかよからぬことを考えいたとしても俺ならばどうとでもできる」
「あのねえ。その慢心が予期せぬトラブルに発展するのよ」
「予期できないものに対してうじうじ考えていても仕方がないだろう?場に応じて適宜対処すればいいだけの話だ」
「そりゃあ全てをカバーすることなんてできないわよ。でも可能性を潰すことはできるでしょ。今回の件は絶対に関わってはいけない類のものだったわ」
「ふん。予期できないにも関わらず、絶対と言い切るなんて大した自信じゃないか」
「アンタねえ…!」
「痴話喧嘩に巻き込まないでほしいんだけど…」
「そんなんじゃない!とにかく!リアムのことは頼んだわよ、ノア!私とシャーロットは闘技大会のことをもう少し探りましょう。どうしてスポンサーがあんな無茶な方法でリアムを出場させようとしたのか、その理由が気になるわ」
「君の考えすぎな気もするけどね」
「……考えすぎだったらいいのよ。普通にさっくり優勝しちゃって賞金か何だか知らないけどさっさと貰って次の都市に向かいましょう」
「魔王の情報も得なければなりませんしね」
「ええ、そうね。私たちは外から聞き込みを行うわ。あなたたちは参加者から話を聞いて頂戴」
イザベラがようやく落ち着いた口調に戻った。ようやく冷静さを取り戻してきたらしい。
リアムはまだ不満げであったが、彼もこれ以上事を荒立てる気はないようであった。
「早速だけど、今日少し聞き込みを行ってみましょう。二手に分かれるのがいいと思うんだけど…」
「じゃあオレはシャーロットと組むよ。いいよね?」
「ええ、私は構いません」
「そういうことで。行こう」
「はい。ではまた後ほど」
「……え」
まるで示し合わせたかのようにすんなりとチーム分けが決まってしまい、残されたイザベラはおそるおそる組むこととなったリアムを見る。
先程まで散々言い合ったのだ、彼も多少は気まずい様子をしているに違いないと思ったが、意外にもリアムは平然としていた。
「あの、リアム…」
「なんだ?」
「私とペアで嫌じゃない…?」
「なぜそうなる?」
「え、あ、いや…だってさっき…」
「特に気にしていない。言いたいことは全て言ったしな。それよりも俺たちもさっさと行くぞ」
「ええ、そうね」
リアムはなぜか機嫌が良さそうですらあった。未だにイザベラはリアムのことを掴みかねていた。




