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140 次の都市へ

翌日、全員無事揃ったイザベラ一向は魔法都市を出立しようとしていた。

見送りに来ていたのはローザとサイラス。だが、サイラスもイザベラたちと同じように旅支度をしていた。どうやら方向は異なるそうだが、共に出るらしい。なんとも行動の早い人である。

ローザは呆れたようなどこか吹っ切れたような表情をしていて、既に学長の服だろうシンプルな黒のローブに着替えていた。彼女も腹を括ったらしい。


「じゃあ次の目的地は、戦闘都市でいいのね?」

「ああ、頼む」


イザベラが寝ている間に次の目的地は決まっていた。勧めたのはサイラスのようだ。彼曰く戦闘都市には何度か魔王が出現した噂があり、猛者も揃っているとのことだった。

とはいえ別にイザベラたちは戦闘狂というわけではない。単純に魔王に対峙したいと言っただけなのだが…まあ魔王を倒すなんていう野望を持っているのだから、戦闘好きと思われても仕方がないかと思い直す。今後は表現に検討の余地ありである。


サイラスは別れ際名残惜しそうにしてくれ、なんとなくイザベラの胸が疼いた。


(私…この人から本当に好かれてるんだ…なんだか不思議な気持ちだわ)


サイラスのことは応えようがないが、無碍にすることもできず曖昧にかわしていたのだが、それに対してなぜか強い視線を感じていた。視線の主はリアムである。


(どうしたのかしら…?)


リアムとはあまりコミュニケーションが取れていなかった。それに別行動も続いていた。彼は最初の仲間ではあるものの、面白そうという理由で仲間になってくれたのだ。飽きれば去ってゆくかもしれない。

そう考えると、シャーロットやノアも似たような理由ではあるが、シャーロットとはそれなりにそれぞれの腹の中を見せ合えた気がする。ノアはそもそも最近仲間になったばかりだ。

リアムはイザベラにとって捉えどころのない不思議な人物であった。

信じられないほどに強く、冷たいように見えて案外世話焼きで、逸れたイザベラを探そうとしてくれたようにそれなりに情に熱い。


彼の端正や容姿と並外れた強さから、もしかすると攻略対象者ではないかと薄々思っていた。だからこそ今までは彼のルートに入ってしまい攻略してしまうことで、彼が自分から離れてゆくのを怖く感じて敢えて距離を取るようにしていたのだ。

しかし、そろそろいいのではないかとイザベラは考えた。

何せ攻略対象者っぽい人物といえばノアだって同じようなものである。だが彼らを差し置いてサイラスルートに入ったのだ。

もしかすると彼らのルートに入る条件はまだ揃っていないのかもしれない。

彼らはBランク(規格外の強さの)と、Aランク。共に一流冒険者。今のイザベラと決して釣り合う相手ではないのだ。

そう考えると逆に安全かもしれないなとも思う。それに攻略対象者でないパターンもあるのだ。その場合シャーロットのようにそれなりに絆を深めておかないと仲間を失ってしまう可能性だってある。


(……まあ、最悪やり直せばいいだけだし)


シャーロットと語り合えたという自信もあり、イザベラは仲間との交流を深めようと心に決めるのであった。

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