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14 女神との再会

「第1ステージクリア、おめでとうございます!」


真っ青な空がどこまでも広がっている不思議な空間に、一定の間隔を開けて並んだ3つの扉。

それから、白い衣を纏った一人の女性。

ここに来るのは二度目だ。


「私は…昨日…」


エリックから告白を受けた。そして満足ゆくまで花畑で寝転がったまま話したのち、彼に家まで送ってもらい眠りについたのだ。

思いがけない彼の夢の話なんかも聞いてしまった気がする。彼は以前小さな町の宿屋だと自嘲していたが、本当は温泉宿が大好きなのだ。そして今も懸命に温泉宿の手伝いをしている。いずれ後を継ぐ者として。

彼からはいつか温泉宿を共に経営して欲しいという話もあの後聞かされた。冗談交じりにではあったが、それはイザベラを束縛したくないと思ってのことなのだろう。

つまり、彼を選ぶということは、あの温泉宿の女将になるということなのだ。自分が!女将!恋愛ゲームから経営ゲームになっているではないか!

そんなことを考えていたらいつまで経っても睡魔がやって来ず、結局明け方まで眠れなかった。

そしてせっかく眠れたと思ったら、今度はこの空間に呼ばれたというわけである。


「如何でしたか?」

「如何も何も…」

「実にお見事でした!流石は選ばれただけありますね」

「はあ…ありがとうございます」

「これから貴女には3つの選択肢が与えられます。1つ目はストーリーを続けること。2つ目は元の世界に帰ること。3つ目はクリアしたキャラと共にその後の人生を共に歩むこと。貴女はどの道を選びますか?」

「私は…」


ここに来た時点で予想していた通りの展開だ。

正直言ってエリックのことは結構好きになっていた。あんなにもグッとくる告白をされて、惚れない女なんているか?エリックを選んでもいいかなあとすら思っていた。思っていた…のだが

(多分、エリックに相応しい女性は私ではないわ)

それが徹夜して辿り着いたイザベラの答えであった。

エリックは心から温泉宿が好きで、自分を支えてくれるパートナーを求めている。

一方イザベラは、今ここでエリックを選び町に留まる選択をしたとしても、いつか冒険に出なかったことを後悔する気がしたのだ。

エリックもそんなイザベラの気持ちを知ってか、強引にアプローチすることなく、あくまで自分の夢という形で語ってくれた。

単なる恋愛ゲームであれば、彼を選ぶのが正解なんだろう。でも、このゲームにはこの先があるのだ。両想いになったからという理由だけでいつまでも幸せに暮らせるわけではない。

この先にあるのはうんざりするほど現実の日常生活。それを好きだという気持ちだけではやっていけないということをイザベラは知ってしまっていた。

(私が本当にティーンエイジャーだったら、彼を迷いなく選んでたんでしょうけどね)

イザベラという姿では十分に若いが、中身は異なるのだ。

イザベラは目を閉じて深呼吸を一つしてから、口を開いた。


「私は、ストーリーを続ける道を選びます」

「畏まりました。それではクリア特典としてイザベラ様にはSSR確定ガチャを引く権利が与えられます」

「SSR確定ガチャ?」

(なんだか急にゲームアプリっぽいワードが出てきたな)

せっかく感傷的な気分になっていたというのに、気が削がれてしまった。


「はい!どうぞこちらを1回回してください!」

「これは…!」

(どう見ても商店街とかで引くガラガラ…!これガチャなのか?)

女神の前に現れたのは、やたらアナログの長机の上に乗ったそれであった。

イザベラはなんとも言えない気持ちになりながらも、抽選機の前に立ち、矢印の方向へレバーを回す。

すると、虹色の玉が一つ飛び出てきた。

玉は次第に発光を強め、ついに目を開けていられないほどの光に辺りが包まれる。

イザベラが思わず目を閉じて、再び開いたときには玉の姿はなく、代わりに虹色のキラキラした薄い何かがあった。


「何これ…?」

「おめでとうございます!こちらは人魚のウロコですね」

「人魚のウロコ…」


なるほどこの薄いものの正体はウロコだったのか。手に取り手触りを確認してから顔まで寄せると、確かに大きいがウロコのようだと思った。


「このアイテムは、使用すると対象者の体力魔力共に全回復する効果があります。また同時に状態異常も全て回復します。ここぞという時にご使用くださいね」

「あー…消耗アイテムなのね…」

(参ったな…こういうレアアイテムって使うの苦手なのよね)


ここぞという時がいまいち分からず、RPGでもこういった類のアイテムを最後まで使用することなく取っておいてしまうタイプなのだ。

(まあ貰えるものは何でも貰っとくか)


「ありがとう。大事に使うわ」


にこりと女神へ微笑みかけると、丁寧に扉まで案内された。


「それでは次のステージへとご案内致します。一番左の扉をお進みください」

「ええ、行ってくるわ」


人魚のウロコを手に、イザベラは扉へと向かったのであった。

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