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139 女神の元へ

「……私、クリアしたのね…」


真っ青な見慣れた空間にイザベラはゆるやかに瞬いた。

なんだか今回はよく分からないうちにクリアできたというのが正しい気がする。

もはや恋愛ゲームをプレイしている感覚があまりなかった。

一生あの世界にたった一人で閉じ込められてしまうのではという恐怖でいっぱいだった。

この世界にはリスクがつきものだ。女神のもたらす選択肢だってそうである。

イザベラはなんとなくどの選択肢を選んでもハッピーエンドだと思っていた。

しかし、元プレイヤーであるシャーロットは選んだ彼を亡くしたと言う。そのうえ彼女は未だゲームの世界の中にいる。

つまりどの選択肢を選んだとしてもそこで終わりではないということだ。選んだ道はもちろんずっと続いていくのである。


(まあもしかするとシャーロットも死んだら女神の元に戻ってくるのかもしれないわね…まさかそんなリスク冒せないでしょうけど)


ここで自分が女神に問うてみればいいのだろうかとふとよぎったが、これまでの女神の性格上すんなりと答えてくれるようには思えない。

イザベラは気合を入れるように深呼吸を一つしてから立ち上がり、女神の元へと向かった。


「第6ステージクリア、おめでとうございます!」


女神を見つけたイザベラに、女神はにこやかに微笑みかけた。

気がつけば第6ステージ。一体何ステージ用意されているのかは分からないが、かなり進んできたのではないだろうか。

少なくとも序盤ではないだろう。中盤…もしかすると気付かぬ間に終盤に迫っているかもしれない。


(いや、でも私はまだCランク…魔王に対峙するのにCランクってのはない…わよね…?)


Aランクまであるのだ。せめてBランククラスでないと歯が立たない気がする。多分ではあるがあのシャーロットが彼を失ったときはCランクだったのではないだろうか。

魔王と対峙するということはそれよりも上ということだ。であれば、現時点でバケモノのように感じてしまうリアムやノアと同レベルくらいにまでならないと話にならないということだ。


(……先は長いな)


嘆息していると、女神が声をかけてきた。


「これから貴女には3つの選択肢が与えられます。1つ目はストーリーを続けること。2つ目は元の世界に帰ること。3つ目はクリアしたキャラと共にその後の人生を共に歩むこと。貴女はどの道を選びますか?」

「ストーリーを続ける道を選びます」


いずれにせよここで仲間たちを置いて元の世界に戻るという選択肢はない。少なくともシャーロットには今以上に幸せになってほしいしその協力をしたい。

イザベラは間を置かずに答えを口にした。


「畏まりました。それではクリア特典のSSR確定ガチャをどうぞ1回お引き下さい」

「はい」


選器のレバーを回し、虹色の玉が落ちるのを確認する。眩い光が周囲を包み、現れたのは液体の入った小瓶であった。


「あれ…これって…」


以前も当たったような気がする。しかし色が違うようにも思える。ちらりと女神に目をやると、女神が曖昧に微笑んだ。


「おめでとうございます!こちらは力増幅薬ですね」

「魅力じゃないのね」

「ええ、こちらを飲むと力が一定時間大幅に上昇致します。持続時間は約一時間」

「えっ、短い!!」

「パワーバランスが崩れてしまいますので」


魔王相手に使えということだろうか。とはいえイザベラは魔法職。力を増幅したとしてもその辺の剣士にすら敵わないだろう。それをどう使えというのか。

イザベラの眉は自然と寄っていたが、女神は小首を傾げるのみであった。


「あっ、そうだ。あのっ」

「それでは、いってらっしゃいませ」

「えっ?私まだ扉通って…えっ、ちょ!ねえっ!待って…!」


シャーロットのことを尋ねようとしたイザベラを察してか、女神はなんとイザベラを強制的に扉の外へと追い出してしまった。

なんということだ。やはりあそこは彼女の意思がある程度反映する空間なのだろうか。

イザベラは結局新たなアイテムだけを手にゲームの世界へと再び舞い戻ることになってしまったのであった。

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