136 感動の再会
「今まで黙っていてすみませんでした。私としても確証が持てなかったため、言い出せなかったんです。ただ今回イザベラさんを救出するにあたり、リアムさんから私の持つ杖が貴女の持つレイピアと兄弟なのだという話を聞いて、確信に変わりました」
「私の方も、貴女の過去を知るまで全く思いもしなかったわ」
いや、ヒロインっぽいと初対面で確かに思ったのではあるが。まさか本当にヒロインだったとは…驚きである。
「それにしても…選んだ方を亡くされたのは本当に…なんと言っていいのか…」
「お気になさらないでください。私の選んだことですから。イザベラさんも後悔しない道をどうぞお選びください」
「ええ、ありがとう…」
シャーロットはまだ立ち直ったわけではないだろうに、イザベラの身を案じてくれていた。イザベラは迷ったが、シャーロットの身体を抱きしめた。
シャーロットは何も言わず抵抗もなく、ただイザベラの腕に身を委ねてくれていた。
そうしていると、ノックの音が響き控えめに扉が開けられた。
部屋に入ってきたのはサイラスであった。
「……お邪魔だっただろうか」
「あっ、いえ!大丈夫よ!」
そういえばシャーロットを抱きしめたままであった。イザベラは慌ててシャーロットを離したが、シャーロットは特に慌てた様子もなく扉の方を振り返る。
「目が覚めたと聞いたのですか?」
「ああ、二人が私のところへやってきてね。……イザベラ、目を覚ましたようだね」
「サイラス…さん」
「サイラスで構わないよ」
気のせいだろうか、サイラスのイザベラを見る瞳がどことなく優しい。このサイラスはイザベラとそんなに長い付き合いではないはずなのだが。
イザベラの疑問が顔に出ていたのだろう。サイラスがふと口元を綻ばせた。
「不思議かい?私も不思議だ。どうして君のことをずっと忘れていたのだろう。…私の女神」
「……えっ!覚えてるの!」
サイラスの言葉にイザベラは瞳を見開いた。ではやはりあの世界は本当に過去と繋がっていたのか。自分は変に過去を変えてしまわなかっただろうか。すぐに不安が生じたそのとき、ノックもなしに扉が勢いよく開かれた。
「ちょっとサイラス!一人で勝手に行かないで!…ああ、イザベラ、久しぶりね」
「ローザ!!?」
姿を見せた人物に思わずイザベラは声を上げた。どうしてローザが?王都にいたはずでは?
イザベラの疑問を汲み取ってか、視線のあったローザは肩を竦めてみせた。
「弟子がピンチだって、サイラスに呼び出されたのよ。参っちゃうわ」
「……わざわざきてくれたの…?」
「当たり前でしょ?可愛いたった一人の弟子だもの」
ローザの言葉に、熱いものが込み上げてくる。うるうると目の潤んだイザベラを見て、ローザはげっと言った。愛弟子の涙に対して、げっはないだろうと思ったが、黙っておく。




