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134 脱出

何もない草原で腰に手をあてイザベラは途方に暮れていた。


「ぶっちゃけこれ以上に私に出来る手ってなくない?もしかして何か条件を満たせばここから出られるという発想がそもそもの間違いだった?それよりも外へ働きかけなければならなかったとか…?」


とはいうものの、外の世界へ働きかける方法が分からない。正直手詰まりである。


「どうしよう…もうこのままいったら現在に追いついちゃうよ…そんなことある?予想ではここはサイラスの精神世界だったんだけどなあ…」


イザベラがこの世界に飛ばされた際、サイラスも共にいた。だからそれがキーとなってここに来たと思ったのだ。現在のサイラスと共にこなかった理由はよく分からないが、少なくとも出る方法はサイラスとの接点で生じると思っていたのだ。

だが実際はどうだろう。サイラスにはもう十分に影響を与えたと思う。それなのに一向に出られる気配がない。


「はあ…私いつまでここにいなきゃならないんだろう…」


ぼんやりと空を見上げる。この空もきっとどこかに透明の壁があって自分は出ることができないのだ。こんなにも何もない草原だというのに、巨大な檻の中にいるなんて…

ふっとイザベラが目を眇めたそのとき、見上げていた空に亀裂が入ったような気がした。


「……ん?」


不思議に思い目を擦ってまじまじと空を見据えていると、亀裂が次第に大きくなったかと思えばパリンとガラスの割れるような音が響いて空にあったらしい透明の壁のようなものが割れてしまった。


「えっ、うそ!なんで…!?」


イザベラがぎょっと驚き棒立ちになっていると、割れた向こう側からシャーロットとリアムが飛び出してきた。

そして二人はイザベラの前へと降り立つ。

イザベラはあまりの急な展開に頭がついていかず、ぽかんと間の抜けた表情を浮かべてまま立っていた。


「イザベラさん、ご無事で良かった」


シャーロットが安堵した様子でイザベラに語りかける。


「……シャーロット?……本物?」

「何を言っている?偽物でも見たのか?」

「リアムなの!?」

「……そうだ。お前を迎えにきた」


間違いない。今目の前にいる二人はイザベラの知る二人だ。イザベラの瞳に熱いものが込み上げてきて涙となり頬を伝い溢れた。

そして勢いのままシャーロットに飛びつく。シャーロットとリアムは若干引いていたが、そんなことお構いなしに本物だと確かめんばかりに肩へと頬を擦り寄せた。


「ちょっ、あの…イザベラさん…、あの…」


シャーロットの戸惑う声も無視してぎゅうぎゅう抱きしめていると、リアムがため息をこぼした。


「おい、もういいか。ここから早く出るぞ」


こうしてイザベラは謎の世界から脱出することが叶ったのであった。

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