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131 古の都市の過去

「そうか…。私がしたことは間違っていたのだろうか」

「……サイラスさん?」

「私は学長になることを目標にずっとここに留まっていた。だが、もし世界を回って修行を重ねていれば…こんなことにはならなかったんじゃないかと。君や君の婚約者、学長のように…被害をあんなに出す前に食い止めることが出来たんじゃないかと思ったんだ」

「……私も同じことを考えていました。もっと修行を重ねていればこんな悲劇は起きなかったんじゃないかって。…でも、…過去を巻き戻すことはできないし、死んだ人間は二度と生き返らない。私がいつまでも悲しんでいたらきっと彼は悲しむ。それにきっとあなたがこの都市を離れて魔王を倒しに行こうとしても彼は悲しむんじゃないかと思うんです」

「……シャーロット…」

「今あなたがすべきことは、魔王退治ではありません。この都市の学長としてこの都市を支え復興してゆくことです。違いますか?」

「それは…」

「その代わりに、旅は私が出ます」

「えっ?」

「私がこの都市に留まっていたのは彼がいたから。…だからもうここに残る理由はありません。正直言ってここにいると想い出がありすぎて…苦しいんです」

「じゃあ一体これからどうするつもりなんだね?」

「そうですね…旅に出て、彼の夢を叶えてあげようと思います。彼、故郷が貧しいからずっと立派になって故郷に支援したいって言ってたんです。だから彼の代わりに私がお金を稼いで彼の故郷に送ります。それから、魔王のことも…探してみます。いえ、魔王よりは…この被害をもたらした者と言った方がいいかもしれません」

「……そうか」

「だからサイラスさんはこの都市の復興を一番に考えてください」

「分かったよ、ありがとう。シャーロット」

「いえ。…では私は先に戻りますね」

「ああ、おやすみ」

「おやすみなさい」


挨拶を告げあって、シャーロットは一人街の方に戻ってしまった。

草原に一人取り残されたサイラスに、イザベラは声をかけてもいいものかと思案する。


(魔王…復興…一体どういう意味だったのかしら)


二人のやりとりから察するに、魔王もしくはそれに準ずる何かがこの都市を危機に陥れ、それによってシャーロットの婚約者と学長が命を落とした…ように聞こえた。


(シャーロットにそんな過去が?…むしろこの都市にそんな過去があったなんて…)


いくら閉鎖都市しているとはいえ情報があまりにも流出しなさすぎている。それだけ人の出入りが少なく、皆が口を閉ざしていたということだろうか。

きっと魔法の力があるから復興作業はそこまで困難ではなかったはずだ。だが…


(失った命は二度と戻ってこない…)


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