130 サイラスとシャーロット
いつの間にか膝を抱えて丸くなった体勢のまま眠りに落ちていたようだ。
はっと意識を取り戻したときには、夜になっていた。
(私…寝ちゃったの…?)
あれから一体何時間寝てしまったのだろうか。確かサイラスが去っていったのは夕方頃であったような気がする。
ということは、1、2時間程だろうか。
「サイラスともはぐれちゃったし…どうしよう…」
声に出すとより一層現実味が増して悲しくなった。ゆっくりとした動作で立ち上がったイザベラの耳に、聞き馴染んだ声が聞こえてきた。
「待って…!待ってください…!」
(えっ、この声は…もしかして、シャーロット?)
どうして彼女が?と疑問は浮かんだが、それ以上に仲間に会えた嬉しさが勝りイザベラは慌てて駆け出す。
どうやらシャーロットはサイラスと話しているようだ。
(あれっ、なんか雰囲気が違う…ような…)
ようやく見つけたシャーロットは今と若干雰囲気が違う。髪は腰まであり、少しであるがどこかあどけない顔をしていた。イザベラの記憶よりも若い…のだろうか。
逆にサイラスはイザベラの最初に知り合ったときとほとんど同じ雰囲気である。
つまりイザベラが寝ている間に、かなりの年月が経ったということなのだろう。
ということは目の前にいるサイラスとシャーロットは過去の彼らである可能性が高い。
イザベラは慌てて木の影に身を隠した。
丁度シャーロットが焦った様子でサイラスを引き留めたところであった。
「サイラスさん!」
「……君か」
「一体どこへ向かおうというのです!?」
「決まっている。魔王のところへだ」
(魔王…!?)
咄嗟に悲鳴をあげそうになったイザベラは焦って自身の口を塞ぐ。もう少し話を聞いていたかった。
「そんな危険なこと…!それに魔王は復活したとは聞いていますが、彼を殺したのは魔王ではありませんよ」
「……分かっている…だが…私にできることはそれくらいだ」
「そんなことありません!!あなたが次の学長になるのだとお聞きしました!」
「……許されるはずがない。私は…君の婚約者を死なせてしまった。…それに学長のことも」
「あれはっ、…あなたは悪くありません!…彼は、…彼は最期まで立派でした。きっと後悔していないと思います」
「……君は強いね」
「………いえ…。ただの強がりですよ」
「そういえば君の方こそ、魔王を探すと言っていたのではなかったかね?」
「それは…、そう…ですね。彼と知り合うまではそれが私の目標でした。…でも、今はもう…そんな気はありませんよ」
(シャーロットが魔王を探してた…!?どうして…?それに、シャーロットの婚約者って…)




