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129 孤独という現実

「さて、ここからどうしようかしら」


サイラスを見送った後、一人取り残されてしまったイザベラ。おそらくキーであるサイラスにくっついておこうと思っていたのだが、この流れでサイラスの背中を追いかけるのは明らかに変である。


「とはいえここに居たところで何か解決しそうにもないし…そうだ。いっそのことローザを追ってみる…とか?」


思いつきであったが、妙案であるように思えた。ローザと会話してみればサイラスからは分からなかった情報がなにか掴めるかもしれない。

ローザの具体的な居場所はさっぱりだったが、おそらくサイラスが去っていった方向が街なのだろう。とりあえず街にさえ出れば新たな情報がまた手に入るはずだ。

そう決意し、イザベラはサイラスの姿が見えなくなった方向へと駆けてゆく。


「そこまで街は遠くないはずだわ…っ痛ッ、…ッえ…!?」


イザベラは草原を駆けていたのだが、不意に前方に何か壁のような障害物を感じて足を止めた。

既にその透明の壁へと強か足をぶつけたところなのだが、痛む足を擦りつつおそるおそる手を伸ばしてみる。


「なにこれ…ここから先は出られないってこと…?」


まるで舞台の背景のようではないか。イザベラは唖然としたまま周囲を探ってみることにした。

すると、ぐるりと草原を大きく囲うようにエリアが区切られていることが判明した。


「傍観者でいろという忠告…なのかしら」


何のヒントもないため、全てが憶測である。あまりの心細さに薄らと涙が目に滲んだ。


「どうしよう…一生ここから出られなかったら…」


怖くてセーブすらできない。一体自分はここで何をすればいいのか。何のために飛ばされてしまったのか。

サイラスがそばにいるときは気が紛れていたのだが、一人取り残されてしまうと急に不安がイザベラを襲った。

どうすることもできず、一人で蹲り膝を抱えて顔を埋めた。

ぽたぽたと溢れる涙も誰にも見られていなければ拭う必要もない。

思えばイザベラは本当の意味で一人になったことはなかった。

いつも誰かがそばにいてくれたのだ。船から投げ出されて一人になったときですら。

そういった意味で、イザベラは初めて孤独を感じていた。


(一人って…こんなにも寂しいものなんだわ…)


改めて共に旅に出てくれた仲間には感謝の気持ちしかない。

魔王を攻略するなんてぶっ飛んだ夢についてきてくれる仲間だ。


(はやくみんなに会いたい…)


そこでふと、リアムの顔が頭に浮かんだ。最初の仲間である彼はどんなときでもイザベラを支えてくれた頼もしい仲間である。

だが、それ以上に…なんだか、無性に彼に会いたくなってしまった。


(……?…なに、この気持ち…)


ざわりと胸が騒ぐような。高揚するような。何とも表現し難い感情にイザベラは戸惑う。

どうして他の仲間を思うときには生じず、リアムを思うときにだけそんな想いを抱くのかイザベラはまだ答えを手にしていなかった。

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