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118 少年との出会い

イザベラが木にもたれかかり頭を抱えていると、不意に真上から子供の声が降ってきた。


「おい」

「……え?」

「おいそこのお前」

「……何かしら」


どこから聞こえてくるのか分からずきょろきょろと辺りを見渡していると、見上げた先に少年の姿を発見することができた。

先程の少女よりも年下の…6、7歳くらいだろうか。可愛らしい顔をした少年が木の枝に跨りながらまっすぐにイザベラを見ている。


「お前誰だ?」

「ええと…イザベラよ。あなたは?」


ここで本名を名乗っていいものか一瞬悩んだが、結局正直に名乗ることにした。

こういうのは嘘をつくと嘘を重ねなければならず、バレたときのリスクの方が大きいと判断したためである。

本名を告げても少年に特に目立った反応はなかった。

そしてきちんと躾けられているのだろう。イザベラが名前を促すと素直に口を開いた。


「俺はサイラス」

「サイラス…!?」


少年の名にこちらが驚く番であった。サイラス?サイラスというとあのサイラスか?イザベラの試練の見届け人の?


「な、なんだよ…」


イザベラのあまりに過剰な反応に反対に少年の方が怯えてしまった。

このまま警戒されてここを去られても困る。イザベラは慌てて笑みを口許に刻んだ。


「ごめんなさい!あなたと同じ名前の人を知っているから、驚いちゃった」

「ふうん…?なあ、お前どこからきたの?」


サイラス少年はイザベラの知っているサイラスと異なり随分とフランクである。

そのギャップに困惑しつつも、イザベラはなんと答えればいいものやらと思案していた。

どこからきたのかなんて、ぶっちゃけ自分の方が聞きたいくらいなのだが。

けれどこの少年にそのまま正直に言ったところで信じてもらえそうにはなかった。

まさか本当に過去に飛ばされてしまったのだろうかと考えもしたのだが、だとすると大人になったサイラスがイザベラのことを初対面扱いしたのも変である。

別人と認識はするだろうが、見た目や名前から何らかの反応をしてもおかしくはないはずだ。


だが精神世界だと断定して好き勝手振る舞うのもまずい

ここを出る条件が分からない以上、下手を打てば一生ここに閉じ込められてしまうおそれだってあるのだ。

最悪死ねば戻れるかもしれないが、もし死ぬことができない場合はどうだろう。


(死ぬ以上に悪い条件があったなんて…思いもしなかったわ)


嫌な想像ばかりがイザベラの頭を渦巻く。

とにかく情報の少ない現段階では、極力派手に動き回らないことがベストだ。

そして元に戻る条件を地道に探っていくしかない。

ただ目の前にいるサイラスは、元の世界でも最後に関わりがあったため、キーとなる人物であることは何となく想像できた。


(今はサイラスと行動することがベストな気がするわ)


であればやれることは一つ。サイラスにとってイザベラが必要であると思わせることだ。

イザベラは悪い大人の笑みを浮かべた。

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