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109 散策

(誰かしら?)


扉を開けると、そこには先ほど想像の中で最後まで付き合ってくれていたシャーロットの姿があった。


「シャーロット!私にはあなただけだわ…!」


思わず感極まり抱きつくと、ドン引きした様子のシャーロットが棒立ちのまま首を傾げる。


「……はあ。イザベラさん、今お時間よろしいですか?」

「え?ええ、どうかした?」

「せっかくなので、街を歩いてみませんか?」

「もちろん!」


なんと古の都市を案内してくれるという。何とも魅力的なお誘いであった。

シャーロットの指示で黒いローブを身に纏い、共に街に出ることになった。

顔を隠す必要はないのだが、パッと見て魔道士であることがわかった方が何かと都合がいいのだそうだ。

二人で街を歩きつつ、イザベラは問いを向ける。


「やっぱり魔道士とそれ以外だと扱いが違ってくるの?」

「……そういうわけではないのですが。この都市では魔法学園が誇りなんです。その卒業生たちの多くは古の都市に留まるため、自然と魔道士にとって暮らしやすい街になり、同時に贔屓してしまう部分もありまして」

「なるほど」


差別というよりは身贔屓という感覚に近そうだ。というより魔道士以外の者がいると物珍しそうに視線を向けられるという感覚に近いだろうか。

確かにランクアップも魔道士にしか受けられないそうだし、魔道士以外にとってこの都市はあまり魅力的ではないのだろう。

となれば、魔道士以外でここに長居する者は少ないだろうし、学園出身者が多いということは自然と魔道士以外の者との接点も薄いはずだ。

それにこの都市は閉鎖的であるとも言っていた。何でも自分たちでできてしまうからだろうか。あまりにも完結しすぎていて、逆にシャーロットやローザが外へ出ていった理由が気になってくる。


(この都市にいた理由はきっと魔法学園で働いていたという彼の存在よね。……ということは出ていった理由もその彼絡みなのかしら。彼は一体どこへ行ってしまったんだろう…)


まだそこまで踏み込んでいいものか判断しかねる。できればシャーロットの方から言ってほしい気持ちはあったが、彼女が喋らないということは今ではないということか。


出来るだけ明るい声音でイザベラはシャーロットに声をかけた。


「ねえ、やっぱり懐かしい?」

「……そう、ですね。私がいた頃とあまり変わっていなくて、今イザベラさんと一緒に歩いているのだが何だか不思議な気分です」


二人でジェラートを買い、レンガで舗装された道を歩きながら食べることにした。

ジェラートは食べている途中に味が変わるという不思議なものだった。何かしらの魔法が使われているのだろうか。

新しい商売を考えてしまいそうになり、自制する。


シャーロットは特に目的地があるわけではないようで、広々とした緑豊かな公園まで訪れるとベンチの一つに腰を下ろした。

イザベラは並んでベンチに腰を下ろす。

この都市の今の季節は春っぽいのだが、どう見ても夏や秋に咲きそうな花まで咲いている。

あらゆる意味で不思議な都市だ…と思いながら花々に目をやっていると、シャーロットが口を開いた。

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