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105 思いを馳せる

どうやらアーノルドから贈られた船は無事だったらしく、停めてあった船に乗り込みリアムの操縦で次の目的地へと向かうことになった。


「へえ、随分立派な船だね。それに…リアムが操縦するんだ?」

「ええ。私とシャーロットも二人でなら操縦できるようになったんだけど…まだまだリアムには及ばないわ。あなたは操縦できるの?」

「うーん…オレは魔法量が多いわけじゃないし難しいんじゃないかなあ…リアムって魔法剣士だろ?魔法量でいえばオレと同じくらいのはずなんだけど…どう見ても君たち以上にありそうだよね」

「あはは…彼はなんというか、何かと規格外なのよね…」


ノアとイザベラは甲板で会話していた。

話題のリアムはというと、見張り台で悠々と船を操作している。

どうやらイザベラと別れた後、船橋でなくとも船を操縦できる技術を会得したらしい。

なんと器用なことだろう。

器用という言葉には収まりきらない気もするが。


シャーロットは次の目的地のことを思ってかぼんやりと一人で佇んでいた。

次の目的地である古の都市は以前シャーロットが居たことがあるという。

話していた限り悪い感情を抱いていたようではなさそうだったが、彼女と出会ったのは王都だ。

つまりシャーロットは何らかの理由で古の都市を出た。

今物思いに耽る彼女はその理由が原因なのかもしれない。


(古の都市…一体どんなところなのかしら)


シャーロットは魔道士にとってあらゆる意味で最適な都市だと言っていたが。

では逆に魔道士でなければ住みにくいということでもあるのだろうか。


(そういえばローザの出身地でもあると言ってたわね)


ローザはイザベラの師匠である。実力としてはかなりのものだ。

やはり有名な魔道士は皆何かしら古の都市との関係性があるものなのだろうか。


(早く私もレベルを上げて…皆の役に立ちたい)


初っ端から規格外の強さを誇るリアムに、Aランクの冒険者であるノア。

同じ攻撃職としてイザベラは二人とかなり実力に乖離がある。

たとえそれが経験値の差だと言われても、だからといってこのパーティのリーダーは自分なのだ。

仲間に甘えてばかりというわけにもいくまい。

彼らがイザベラと共にいつまでも冒険してくれるという保証はないのだ。

最悪単独で魔王と向き合うくらいの覚悟がなければこの先旅を続けることは出来ないだろう。


(絶対にレベルアップしてやるんだから…!待ってなさいよ、古の都市!)


会話が次第に上の空になったイザベラに、話しかけていたノアはいつの間にか会話をやめ、微笑ましいものを見るかのように頬を緩ませていた。

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