104 新たな仲間
イザベラ一行は、ジーンとジーンの弟たち、それからノアに見送られ街の端にきていた。
これから次の都市、古の都市へと旅立つのだ。
花の都市には思いがけず長居してしまった。その上、魔王の情報はあまり手に入れられていない。
だが、次の都市では少なくとも自分とシャーロットのレベルアップには繋がる。そうすればさらに難易度の高い都市に向かうこともできるだろう。
果たして自分がクリアに近づいているのか悩むところではあるが、女神からステージクリアと告げられているところを見る限り、一応まだ正規ルートのどこかにはいるのだろう。
(そういえばノアとはここでお別れかしら…てっきり彼も攻略対象者なんだとばかり思ってたけど…)
やたらとハイスペックなイケメン。とてもじゃないがサブキャラには思えないほどに個性的なノア。
だが彼とは結局そこまで仲を深めることができなかった。ここでいう仲とはもちろん恋愛的な意味である。
それどころではないという状況が多かったせいだ。
それから、リアムたちと合流してからはなぜかリアムがやたらと干渉してきたせいでもある。
(リアムとノアはあまり相性がよくないのかしら)
リアムは見ての通り我が強い。ノアは一見柔らかく見えるが、中身の部分はわりと頑固であることを見抜いていた。
二人とも大人なので目に見えて争うようなシーンこそなかったものの、互いの意見が衝突しては気まずい空気が流れることなら多々あった。シャーロットは全く気にしていなかったが。彼女は彼女で大物である。
(もしかしてノアルートもあったけど私が逃しちゃっただけだったりして?)
ジーンルートとノアルートがどこかで分岐していたのかもしれない。イザベラは知らない間にジーンルートを選択してしまっていたのだろう。
結局それが一番あり得るかなと考えを落ち着かせ、別れの挨拶を口にしようとした。
そんなイザベラよりも先にノアが口を開いた。
「あのさ、この先オレも一緒に行ってもいいかな?」
「え?」
「魔王を倒す旅。どう?オレ結構強いよ」
まさかの言葉にイザベラが思わず目を瞬く。イザベラが何か答えるよりも先にリアムが口を開いた。
「お前は国の依頼でこの街に来ていたんじゃないのか?Aランクの冒険者は自由に動けないと聞いたが」
「普通はね。まあやり方によっては自由にもできるというか…オレが一緒に行くのは迷惑?」
「いえ、純粋な戦力としては大いに役立ちますね」
「……イザベラの判断に委ねる」
「え、ええと…」
実にありがたい申し出である。イザベラに断る理由はなかった。
「よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」
(まさかノア攻略ルートってこれから…?)
なかなか波乱の多そうな旅の兆しが見えた。




