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1 プロローグ

それはどこからともなく生じた噂であった。

発端はゲーム情報をやりとりするネットの掲示板だったのではないかと思う。

幻のゲームとも囁かれるそれについての詳細はこうだった。


ある日突然知らないメッセージが送られてくる。

そこに貼ってあるアドレスからアプリをダウンロードした者だけがそのゲームをプレイすることができる。


幻のゲームの正体は、冒険も楽しめる恋愛シミュレーションなのだが、ただのゲームではない。

なんと、プレイヤーは実際にゲームの中に入り込んでしまい、クリアしないと現実世界に戻ってくることができないというのだ。

しかも未だ一人もそのゲームを攻略できた者はいないらしい。


「じゃあ、なんでそんな情報が流れてんのよ…ガセにも程があるっしょ。もうちょっと設定練って欲しいわあ。しかも知らないメッセージから送られてきたアドレスのアプリなんて怖すぎてダウンロードなんか出来るわけないじゃん。ウイルス感染待ったなしだっての」


ベッドの上で仰向けに寝そべり、スマホを眺めながら独りごちる女性が一人。

彼女は生粋のゲーマーで、さらに言えば恋愛シミュレーションには目がなく、それこそ片っ端からやりこんできた。

だからこそ、最初囁かれていたゲームにも興味を持ったのだが、色々と調べてみても怪しい情報しか出てこず、単なるフェイクだったかと諦めかけていた…のだが

そんな彼女が眺めるスマホ画面には、今まさに知らない人物から送られてきたアプリのアドレスが貼ってあるメッセージが映っていた。


「うーん…いや、ない…ないよね…。ウイルスだよねやっぱり。怪しすぎるもんね。…まあでも、ダウンロードさえしなきゃ大丈夫かな。ちょっと見るだけ…クリックするだけなら…」


詐欺であることは十二分に理解している。していても抑えられないこの好奇心。先程からかれこれ30分以上彼女はスマホ画面とにらめっこしているのだ。


そして、ついに…


「見るだけ!チラッと見るだけだから…!」


彼女はそのアドレスを押してしまった。

すると、不意にスマホが真っ白に染まる。


「えっ、嘘でしょ。やっぱダメだった!?押すだけでアウトのやつ!?」


ウイルスに感染したかと血の気が引いた彼女はスマホを持ったまま勢いよく起き上がり、画面をじっと眺めた。

白く染まったスマホは次第に光量を増し、もはや直視するのも戸惑われるほどに眩い光が辺りを包む。


「……っ、…なに…?」


そして一層眩く点滅し、光が彼女を包み込んだかと思えば、跡形もなく消えてしまった。

そこには、もう彼女の姿も残されてはいなかった。


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