いつも口うるさいといわれた姉と、姉のものを頂戴といつもとりあげる自由奔放な妹、妹に振り回された姉が妹を見限った訳とは?
「……あら、いい格好だこと」
私はにこやかに笑い、牢屋に入った妹を見ました。
妹は強い目で私をにらんできます。
でも私があなたにこんなことをしたのは、あなたがあんなことをしたからですわよ。
私はああ、そういえば処刑は三日後に決まりましたわとクスクスと笑いながら宣言すると、ここからだしてと泣き叫ぶ妹。
……妹だからと見逃してきましたが、さすがに私の将来の夫となる殿下をたぶらかそうとしたのは許せません。
どうしてこうなったのかというと……。
「お姉さま、これ頂戴!」
「あなたはいつも私のものを頂戴といってもらってはすぐだめにするでしょう。駄目よ」
私は妹に向かってたしなめます。するといじわるいじわると床に転げまわって泣き叫ぶ妹。
妹に譲っておやり姉なんだからという両親に言われ、しぶしぶぬいぐるみの熊を妹に差し出しました。
そして三日後、ぼろぼろになって庭に投げだされたぬいぐるみの熊を見て私は泣きました。
修理をしようとしてもどうしようもなく、両親に捨てられ、お気に入りでおばあさまにもらった一点ものだったぬいぐるみはいなくなり、そして代わりにと両親が買ってくれたウサギのぬいぐるみも頂戴頂戴攻撃で妹のものとなり、すぐにぼろぼろになり捨てられました。
飽きるのが早すぎるのです。
いつもいつもこうでした。
三つしか年が違わないのに。
私はすべてをあきらめ、ものを欲しがらないかわいげのない子供とやらになりました。
妹をますます両親はかわいがり、疎外されるようになりました。
でも嫁いでしまえば離れられると我慢したのです。
だが、私が十七で王太子殿下の婚約者に選ばれたのを気に入らなかったのか、あの妹はなんと殿下にとりいり、私の悪口を吹き込んだのです。
「妹のミリアをいじめた罪により、ユーリア、お前を婚約破棄の上、断罪する!」
まるで愚かな戯曲のようでした。
婚約破棄された私は、辺境送りになり、妹が後釜に収まったのです。
あの妹の愉快げで得意げないつもの笑顔が忘れられません。
さすがに私はあれと離れられたからいいかなとは思わず、報復を決めました。
「どうしてこんなことをするのよ、お姉さま!」
「当然でしょう、あなたが王家の財政を食いつぶし、自らの欲丸出しで、殿下にいろいろなものをおねだりをしていたことは知っていたもの、わが家の財政もあんたのせいでだいぶダメになりかけてたし、だから調べたら案の定、これでしたしね」
私は妹が王家の財政を食いつぶしている証拠を調べ、陛下に進言しました。さすがに目に余る虚飾に陛下も焦っていたようで、妹を断罪し、殿下を廃嫡することにしたのです。
進言したことにより、私は辺境追放を解かれ、ここにいるわけです。
「私は王太子殿下の婚約者なのよ!」
「ああ元ね、私と同じですわね」
私は高らかに宣言し笑います。あなたがねあんなことをしなければ目を瞑ってあげたのですわ。
でもねえ、さすがにやりすぎましたわ。
私はね、私のものを盗られるのは慣れたつもりでしたけど、私の将来にかかわることを台無しにされるのは許せませんでしたの。
平穏無事にあなたと離れて過ごす未来がなくなったからですわ。
私はにこりと笑い、処刑方法はどうなるのでしょうねえと妹にささやきます。
泣き叫ぶ妹、でもねえ、この世界から消えてくれなきゃ、たぶん私の目の上のたんこぶで居続けるでしょうから、と私はこの世界から消えてくださいねとまた笑ったのでした。
読んで下さりありがとうございます
評価、ブクマをポチ応援して頂けると嬉しいです。執筆の励みになります。よろしくお願いいたします。