08話 デート?
ギルドを出たリュウとリーナは依頼の準備のため、街の装備屋にやってきた。
店に入ると、筋骨隆々とした壮年の男性が二人を迎え入れる。
「いらっしゃ――おっ! 来たな有名人。派手にやらかしたそうじゃねぇか」
店主はリュウの顔を見るなり、笑みを浮かべた。
リュウと店主は、リュウが騎士団に入ってすぐの頃からの付き合いで、気心の知れた仲でもある。
「で、今日は何の用だ? ついにお前も鎧の良さに気付いたのか?」
店主の問いかけにリュウはそんなわけないと答える。
「俺が鎧をつけても重いだけだって知ってるだろ……。そうじゃなくて、今日はこの子の装備を見繕ってほしい」
リュウはそう答えると同時に、後ろで隠れるように服をつまんでいるリーナを店主に見せた。
店主はそんなリーナの様子を見て、驚きに眼を丸くする。
「おいおい。何だそのかわいい子は……。そうか、お前もついに相手が見つかったのか……」
店主はバンバンとリュウの肩を叩いた。
相手とはギルドのメンバーのことを指しているのだろうか、とリュウは解釈した。
そんなことより装備を、と催促しようとするが、店主の暴走は止まらない。
「けどお前、アリシアちゃんが怒ってるんじゃねぇか?」
「なぜそこで俺の部下の名前がでてくる」
「なぜってそりゃあ、なぁ……」
歯切れの悪い店主の言葉。
気がつけば、リュウの服を引っ張ってリーナが「アリシアって、誰ですか……?」と尋ねている。
その目にはなぜか暗い光が宿っていた。
そういえばリーナには説明していなかった、と思い至るリュウだったが、それはまた今度でいいと結論づけた。
今は装備を整えるのが優先だ。
まだ納得のいっていない様子のリーナを引き剥がして、店主に装備を見繕ってもらう。
それから数十分後、店主とリーナの長い相談が続き、リーナが店の奥から新調した服で出てきた。
「マスター、どう……ですか?」
それは黒を基調とした軍服のような姿だった。
リーナの銀髪との対比が絵画のような美しさを思わせる。見る人が見れば、軍服というよりも何か儀式的な礼服と思われるかもしれない。
服がしっかりとフィットしているせいか、リーナの体のラインが非常によくあらわれている。
リュウはそれを確かめるためにリーナの腰や肩に手を回す。
「きゃ……っ。マ、マスター。こんなところでなに……をっ」
リーナが顔を赤くしてあわあわと手を振る。
一通り腰まわりや肩、腕の感触を確かめたリュウは満足げに頷いた。
「動きやすくて良いんじゃないか」
「……」
そんなリュウを無言で見つめるリーナ。
なぜか気まずい沈黙が二人の間に走ったが、助け舟を出すように店主が服の説明を始めた。
「おうよ。鎧も考えたが、この子の場合重い装備は逆に危険だと思ってな。この服ならマナを通せばそこらの魔獣の攻撃ぐらいなら耐えられるし、こっちの方がいいだろう。何よりかわいい」
「最後のはよくわからんが……、まあいい。これで頼む」
リュウが店主に金貨を渡すと「まいど」と上機嫌な声が返ってくる。
そんな調子でリュウたちは、初依頼に向けての準備を整えたのだった。
* * * * * * * * * *
ギルド申請からの翌日。
一通り準備を終えたリュウたちは、早速馬車に乗ってセイラム村を目指していた。
王都から南西へ約半日の距離に位置するセイラム村。
街道を進む途中、リュウたちは何度か魔獣に襲われた。
一番多かったのは鋭い牙と分厚い毛皮が特徴の狼犬だ。
集団で襲われると非常に厄介な魔獣だが、街道では一匹ずつしかあらわれなかった。
はじめはリュウがすべて倒すつもりだったが、いっしょに戦えるようになりたいというリーナの希望で、そのほとんどをリーナが相手をしていた。
「リーナ! 躱して首元を狙え!」
「はい! マスター!」
元々森で生活していたリーナは魔獣に対する感覚も鋭く、また身体能力も高かったため、リュウの指示の下次々とガルムを倒していく。
「やったな。リーナは筋がいい」
リュウが褒めると、リーナは嬉しそうにえへへと照れ笑いする。
そうして魔獣との戦闘経験を積みつつ、ときに疲れたリーナが御者台でリュウにもたれかかったりしつつ。
陽が落ちる頃、二人はセイラム村へと到着した。




