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今度こそアーガスの首をとる!

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 キングを使った僕の暗殺に失敗したせいか、アーガスがドラゴンで総攻撃を仕掛けてきた。


 壊れていた北門はブレスを何発も撃たれて完全に消滅しているし、そこにつながる城壁も瓦礫になっている。


 騎士団も冒険者パーティーも総崩れだ。


 空からはドラゴン、地上はいろいろな魔獣が押し寄せていて、もう地獄絵図としか表現できないものになっている。


 そんな中でメレデクヘーギ侯爵とその夫人が奮戦していた。


 周囲にいるのも精鋭中の精鋭なのだろう、かつて北門があった場所の少し後ろあたりに魔獣の死骸が積み上がっている。


 ドラゴンすら10頭は倒していた。


 ただ、そんな局地的な勝利ではまったく収拾がつかなくなっている状況なのだ。


「お父さま、お母さま、撤退する気はないのかしら?」


「フェヘール、アペフチを突っ込ませないか? あいつ、ドラゴンでも1まわり大きいし、かなり強いだろう?」


「わからないけど……頼んでみる。アペフチ、きてくれる?」


 フェヘールが大きな声で叫んだ。


 するとメレデクヘーギ侯爵家の中庭から真っ赤で巨大なドラゴンが飛び立つ。


「ねえ、アペフチ。あいつらブッ飛ばせる?」


「弱いものイジメは好きじゃないが……フェヘールの頼みならばやってみるか」


「乗せて?」


「一緒にくるか」


 フェヘールとアペフチのコンビは北門に突撃していく。


 あの数だからアペフチだけでどうにかなるとは思えないけど、いくら負傷しようがフェヘールが治癒できるからゾンビアタックみたいに延々と戦闘を継続できるから簡単には負けないだろう。


 それに赤い巨大なドラゴンにまたがったフェヘールが魔獣を蹴散らせはじめると、あきらかに防衛側がヒートアップしたし。


 騎士も冒険者も「聖女様がドラゴンを引き連れて援軍にきてくれた!」と大盛り上がり。


 崩れかけていた戦線を維持できそうな雰囲気になっている。


 それに魔獣の動きがおかしくて、普通ならドラゴンに怯えて逃げ出しそうなものだが、なぜかアペフチに殺到していた。


 ヘイトを全部まとめてアペフチが集めてくれるのなら、騎士も冒険者も比較的安全に戦える。


 聖女様のヒールもあるしね。


 ここはフェヘールを信じて、任せて、僕は僕の役割を果たす。


「キング、いくぞ」


「どこに?」


「取り損ねたアーガスの首を取りにいく」


「まあ、これじゃあ大将を殺る以外に勝ち筋はないわな」


「ちなみにキングは気配探知もできなかったりする?」


「冒険者の中でも上のほうの奴は気配を読めるみたいだな。オレも練習してみたが、あんまり上手くいってない」


「それなら僕を信じてもらうしかないが、アーガスの位置はわかる」


「ついていけばいいのか?」


「ついてくることができるなら、ね」


「煽るねぇ」


「アーガスの奴、かなり後ろまでさがってる」


「つまり?」


「スタンピードの中を強行突破することになるな」


「どうせ、そんなことだと思ったよ」


 ぼやいているような言葉が帰ってきたけど、キングの顔は緩んでいた――笑っているのだ。


「なあ、キング」


「なんだ?」


「ひょっとして最初に魔法を習ったとき、いったいどんな物理現象なんだよ、と疑ったり、バカにしたりしなかったか」


「もちろんしたが? 前世でも魔法は性に合わなかったし、ゲームではなくて異世界だったとしても同じだろ? オレは剣士だ」


「それで身体強化の魔法が使えなくなったんだな。例えば『ワールドサーチ・オンライン』や『アトランティクファンタジア』を覚えている?」


「ああ……そうか! あの感じなんだな?」


「なんか教えるまでもないような気がしてきた」


 ゲームの中では現実以上の身体能力になるのは割と普通だ。


 何メートルもある巨大なモンスターを飛び越えたり、延々と長時間の戦闘をこなしたり、とんでもない速さで走ったり。


 それがVRゲームだと本当に自分の筋肉量や機動力が爆発的に上昇したように感じられるのだが、ただシステムがアシストするのではなく、ちゃんとプレイヤーが意識的にやらないと身体が強化されないタイトルもあった――それをゲーム内でも身体強化の魔法と呼んでいたかどうかは別にして、この世界での身体強化の魔法と似た感覚になる。


「いや、そこに思い至って、それを信じて修行し、ちゃんと完成させたんだ。キングと呼ばれたオレができなかったことを成し遂げたのだから、自慢していいし、誇ってもいいぞ」


「上からくるなぁ……しかし、ちょうどいいから『ワールドサーチ・オンライン』のウルフズベインをやってみろよ。何年ぶりになるかわからないけど、前世であれだけ使いまくっていたんだから体が覚えてるだろう?」


「バカを斬るのに便利だからな」


 もともとの『ワールドサーチ・オンライン』では居合いのように剣を高速で抜いて左から右に斬りつけ、その右に流れた剣を返して左下に向かって斬り、さらに跳ね上げて右上に斬るという、3連続技だった。


 この剣を早抜きして斬撃できるのが対人戦においてかなり有利で、有名プレイヤーに粘着して嫌がらせをしてくるバカがどんなゲームにもいたから、キングは『ワールドサーチ・オンライン』以外でも同じような技ができるように工夫を凝らしていたのだ。


 別ゲームやアニメの剣技を再現するというのは僕たちが前世で一番熱心にやっていたことだったかもしれないけど、熱心にやったところで絶対に再現できるというものではない。


 だけど、これだけはどうしても習得したい剣技というのがあるとしたなら、キングの場合は『ワールドサーチ・オンライン』の「ウルフズベイン」だ。


「体の中で魔力をぐるぐるまわして高めていくことはできるか? そもそも魔力を感じるところからはじめないとダメか?」


「いや、さすがに魔力はわかる。ただ外に放出しようとしたら火でも水でも風でも、上手く形にならず、崩れて消えていくような感じがする。これを外に出すのではなく、体内でまわせばいいんだな?」


「高まった状態が身体強化されている状態でもあるから、あとは知っている剣技の動きを再現していけばいいんだ。ゲームのアシストみたいなものはないわけだから、全部を自力でやっていくことになるけど、身体のポテンシャルが人間のレベルを超越するので問題ない」


「オートじゃなくてマニュアルで再現かよ」


「できないなんて言わないよな?」


「まあ、オレならできるけど。クリートもできてるんだし、な」


「そうそう、僕ができるんだからキングもできる」


「まあ、剣で戦えばオレ以上のプレイヤーはいないから剣王――つまりキングなんだが、剣技の数や、その組み合わせの引き出しはディクのほうが上だからなぁ。なにしろ剣技辞典の2つ名は伊達じゃない」


「そういえば別ゲーの剣技を2つ3つ組み合わせるとか荒技やってたな」


「いまはやってないのか?」


「知ってるだけの技を再現するほうが忙しくてね。ちなみに現段階では僕の知る剣技の100パーセントどころか半分さえできない。組み合わせなんて、その先だから」


「ちょっと待て。剣技辞典が知る剣技の半分でも充分にすごいぞ?」


「練習で1回でも成功した、という程度も含んでるから。実戦でも使えるレベルとなったら数えるほどさ」


「はっ! いくらなんでも盛りすぎだろ? 実質的に使える剣技はいくつよ? 5とか10とか、そんなラインだろう」


 いいことを聞いた、とキングは喜んでいる。


 きっと僕をすぐに追い越せると計算しているのだろう。


 まだ13歳だし、時間はあると慎重に少しずつ進めていた剣技再現の研究だけど、今後はリスクをとってでも早める必要がありそうだ――キングと殺し合う未来があっては困るけど、そうなったときは絶対に負けないようにしておかないと。


 まあ、僕が使える剣技が5とか10がやっとだろうと侮ってくれてる間なら、いつでも簡単に斬れると思うけど。





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