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剣技の代償どうしよう?

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 キングのことを美形の男の子だと思っていたけど、実はボーイッシュな女の子らしい。


 でも、だからといって笑うポイントではないと思うのだが。


 そもそも僕たちはゲーム内で出会ったのだ――ネカマとかネナベが普通にいて、中身がオッサンの美少女プレイヤーに男性プレイヤーが群がったり、姫プレイして楽しんでいたら男だとバレで大炎上したり、冷静に考えれば狂っているとしか言えないような状態が日常で、誰もそれがおかしいと疑問に思わない世界。


 だから、キングが美少女剣士になってもいい。


 そもそも僕はキングとオフで会ったことないので、ゲームアバターはどんなゲームであろうと決まって髭面の厳ついオッサンだったけど、本当は美少女だったのかもしれないし。


 VR世界のアバターと、それを操る中の人の容貌や外見はまったく別だからね。


「おまえ、いま変なことを考えてないか?」


「ん? だから、キングが美少女でもいっこうにかまわないと思っているだけだが?」


「いや、困るんだ」


「なぜ?」


「いまのオレは強い。同世代で最強かもしれない――こともないか。いまクリートに負けたから同世代で2番目に強い」


 だけど、それを保つのがだんだん辛くなっている、とキングは言う。


 つまり人間の成長として10代の前半くらいまでは女性のほうが早いから、まず無敵。


 しかし、10代も半ばになってくると男子の成長が著しく、骨の太さとか筋肉量とか、そのあたりで女子はだんだん不利になっていく。


 つまり、キングはフィジカルではだんだん男に勝てなくなってきていて、それで焦っているのだった。


 で、そんなところをアーガスにスカウトされた、と。


 まあ、こうやって話を聞くとキングの事情はわかったし、ちゃんと理解もした。


 別に殺し合いになったことは気にしてない――前世では各種のゲームで1000回は殺して、殺された関係だ。


 僕とキングはゲームの好みが似ているようで、本当によく顔を合わせたんだ。


 わくわくしながら新発売のゲームを発売日にプレイしたら、どこかで見たような髭面のおっさんがいてね。


 ちょっと剣を合わせれば、どこかで見た剣筋だったり。


 そして、味方になることもあったけど、敵になることもあり、イベントで競ったり、お互いの腕を見たいというだけの理由でバトルになったり。


 僕たちの関係性はそんなもんだから、それが異世界になったところでかわらない。


 どちらかというと、ここで問題にしなければいけないのはアーガスだ。


「おい! おまえ、前に立ちションベンにも慣れたと言ってなかったか?」


「言ったが……そういうもんじゃないんだよ。これはアイデンティティの問題だ」


「だったらヘリアルの呪術をフェヘールと同じく治癒魔法のほうにもっていって、性転換手術とか、そういう方向性もあっただろう?」


「俺が知っている性転換手術は男性の外見を女性らしくしたり、その反対だったり、とにかく見た目だけだから。骨が太くなったり、筋肉が増えたりはしないぞ。ホルモンにしても定期的に注射でおぎなうんだし。それとも、おまえはそこまで再現できる性転換手術を知っているのか?」


「……すまん、知らん。ということはフェヘールの力を持ってしても無理だ」


「だろう?」


「いや、同意を求められても。それは、つまり実現的に可能性のない魔法をエサにキングを釣ったということにならないか?」


「いや、だから外見がそれらしくなるところまではなんとかなるんじゃないかと思うんだが。俺は男から女になれればいいんだし、魔法士でもあるから、別に筋肉は求めてないし……」


 それを聞いてキングの様子が一変した――殺気をまとったのだ。


「騙したのか!」


「いや、騙してない。ちゃんと方法はある」


「信じられるか!」


「やべえ……今日のところは見逃してやる!」


 負け犬テンプレ台詞を叫んだアーガスがドラゴンで逃亡。


 待て! と叫んでキングが追いかけるけど、自分の首が危ないのに待てと言われて待つ奴はいない。


 空中を疾走して斬る剣技でも使えればチャンスもあったのだろうに、残念ながら現在のキングはゲーム内で無敵だったころとは違う。


「くそっ、逃げやがった」


 キングが悔しそうに呟く。


「逃がしたね」


「逃げたんだ」


「さすがのキングも追いつけないな」


「おまえが剣技を教えてくれれば追いつけた」


「おいおい、教える暇が何秒あった? たぶん剣技を習得するにはカップラーメンを作るより時間がかかると思うけどな」


「まあ、それはそうかもしれないが……」


「だいたい剣技を教える報償をもらってない。というか、逃げていったぞ」


 遠くに見えるドラゴンの背を指した。


「………………他のものではいけないか?」


「そうはいっても、いまのところ欲しいものはないけどなぁ」


「金貨が7枚と、銀貨が15枚、銅貨が20……23枚。これでどうだ?」


「キング……」


「いいのか?」


「貧乏なんだな」


「いや、そこそこの金額だろ?」


 キングが顔を真っ赤にして言い返すが、まあ、そうとも言えなくもない。


 庶民の子供は現金なんか持ってないのが普通だし、なにかで手にする機会があったとしても銅貨数枚がやっと。


 金貨が7枚もあれば充分にスゴいんだけど、この世界の僕の身分は王子だし、剣技のおかげで稼ぐ気になればもっと稼げるからね。


 前世ではトップクラスの剣士は万単位の金を持っていてもおかしくない――ゲーム内通貨でしかないし、トップクラスの剣や防具は高いし、クエストやるにも必要な物資を調達する経費がいるから、上へいけばいくほど金が大量に入ってきて、大量に出ていく。


「1000000枚の金貨を持っているキングだったらイメージ通りなんだけど……金貨7枚なんてゲームはじめて1日目、やっと銅の剣を手に入れてスライムと戦ってるころか?」


「1対1ならオーガを相手にしても負けねぇよ。なんだよ、スライムって。あんまりバカにするなよ?」


「剣技なしフィジカルのみで女の子がオーガと戦えるって普通にスゴいな」


「ああ、そうだ。いまオレは女の子だった。ちょっと……いや、すごく嫌なんだが……猛烈に抵抗があるんだが、おまえくらいの男の子だと、ちょうど女の子に興味が出てくるころだろう?」







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